SHORT STORY
□三匹の子ブタ
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※お読みになる前に……
童話「三匹の子ブタ」を本編キャラに演じさせたパロディです。
原作とは異なる点が多々あります。
【配役】
子ブタ三兄弟─長男:ガイア 次男:アベル 三男:マルス
狼─パル
お母さんブタ─ゼロス
それでは、お楽しみください。
あるところに三匹の子ブタの兄弟が暮らしておりました。
長男のガイアは、とっても元気いっぱいな力自慢。
次男のアベルは、他の二匹よりしっかりしていますが、頑張りが空回りしてしまう苦労人。
三男のマルスは、とても優しくて純粋だけれど、ちょっぴり天然です。
ある日、三匹がいつものように楽しく遊んでいると、お母さんブタのゼロスがこう言いました。
「貴様ら、もういい歳だろう。いい加減、自立して家を建てて働け。豚共」
ゼロスお母さんは、とても厳しいお母さんです。
ブタなのに、崖から子を突き落とすようなお母さんなのです。
三匹に情け容赦のない言葉を投げつけて、半ば強制的に三匹を家から追い出してしまいました。
野に放たれた子ブタ三匹は、これからどうするか悩んでいました。
「家を建てて働けって言われてもなぁー」
ガイアがうーんと唸りながら、腕を組みます。
「このまま一緒に旅でもしない? 家建てるの面倒だしさ」
ひらめいた! と言うように、マルスが人差し指を立てて言いました。
「それいいな」
ガイアはそれに賛成します。
「お前ら、母さんに言われた事忘れたの? 噂の狼の話」
二匹のやり取りを見ていたアベルが、口を挟んでそう言いました。
三匹が家を追い出される直前に、ゼロスお母さんは三匹にこんな話をしたのです。
「そういえば、最近この辺りには狂暴な狼が出るそうだ。なんでもブタの、特に子ブタの肉が大好物らしい。せいぜい食い殺されないようにな」
ゼロスお母さんから聞いた狼の話を思い出して、三匹はブルッと身震いします。
「……素直に家建てよっか」
額に冷や汗を浮かべながら、マルスがきちんと家を建てようと言いました。
それがいい、とガイアとアベルは頷きます。
「よーし、じゃあ早速建てようぜ! オレ様、二階建てがいい!」
ガイアが意気揚々と提案します。
「は? もしかして、三匹一緒に暮らす気?」
ガイアとは反対に、嫌そうな顔をしてアベルが聞き返しました。
「そうじゃねえのか?」
「違うに決まってるだろ。マルスのお守りだって面倒なのに、ガイア兄さんの面倒まで見きれるわけないじゃん」
ふん、と鼻を鳴らして腕を組みながら、アベルは答えました。
その隣では、マルスが何とも言えない顔をしています。
「えぇー、いいじゃんか。アベルいねぇと飯食えねぇし、マルスいねぇと風呂沸かねぇし」
「……ガイア兄さんは何すんのさ」
駄々っ子のように反対するガイアに怒りを滲ませながら、アベルは尋ねます。
「オレ様はそうだな……お前らの邪魔にならねぇように、静かに目を瞑って動かないようにするとか」
「それ、ただの睡眠」
「あ、んじゃ、アベルの料理が上達するように味見を」
「それただの食事! ふざけんなよ、バカ長男! 自立しろよ!」
ガイアの挙げる仕事は、どれも仕事とは言い難い楽なものばかり。
とうとう堪忍袋の緒が切れたアベルは、声を荒げます。
「あぁ!?」
逆上したガイアがアベルに掴みかかります。
どう見ても、非はガイアにあるのですが。
マルスは二匹の険悪な様子に慌ててしまいます。
「あ、あのさ、オレも一人暮らしがいいなぁ……」
「おいマルス、お前もか!?」
控え目に声をかけてきたマルスを、「オレ様を裏切るのか!?」と言うような視線でガイアは睨みました。
「ガイア兄のとこには週に一、二回くらい掃除しに行くからさ。あと、ご飯の余りとかも持って行くし……。だから、ね?」
マルスは極力、ガイアの事を気遣いながらそう言いました。
マルスは兄思いの優しい子なのです。
「んー……まぁ、それならいいぜ」
渋々でしたが、ガイアはそれぞれが自立して暮らすことに賛成しました。
とはいえ、ガイアの暮らしは自立と言うには程遠いのですが。
「弟に気を遣わせんなよ、クソ長男」
傍らでガイアに聞こえないような声で、アベルはボソリと呟きました。