SHORT STORY
□牛乳の話 その2
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ある日、アベルは牛乳を片手に物思いにふけっていた。
「なんでなんだ……。こんなに努力してるのに、努力が報われないなんて……」
瓶の中で白い波を立てる牛乳を見つめながら呟く。
「どうして……背が伸びないんだ……!」
アベルは眉間に皺を寄せる。
「朝昼晩、それにおやつの時間や戦ってきた後、吐きそうなくらい牛乳飲んでるってのに……」
アベルは背を伸ばすために、毎日ひたすら牛乳を飲んでいた。
朝昼晩はそれぞれ牛乳瓶二本ずつ、それ以外でも喉が渇いたら牛乳を飲むような生活をずいぶん長く続けている。
たまに吐きそうになることもあったが、背が大きくなるならと我慢して続けてきた。
だが、それだというのに全くと言っていいほど成果が出ない。
毎日身長を測っても、数字はちっとも変わらない。
それどころか、時々1ミリほど縮んでいることすらある。
「こーんな地道なことしないで、魔法みたいにパッと背が伸びたりしないかなぁ」
溜め息混じりに呟くアベル。
「ん……待てよ。魔法……これだっ!」
アベルは何かを思い付いたらしく、頭にリンゴのヘタのように居座っているアホ毛がピコンッと立つ。
「ルナあたりに頼んで、魔法で背を伸ばしてもらえばいい話じゃん!ボク頭いいな!」
そのひらめきに希望を抱いたアベルは、目を輝かせる。
そして、手に持っていた牛乳を一気に飲み干した。
「よし、そうと決まれば早速ルナのとこに行ってみるか」
口元を手の甲で拭ったアベルは、ルナを探して歩き出した。