DESTINYー絆の紡ぐ物語ー

□第16章 生け贄の村 【前編】
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※注意!
この章には、残酷表現・流血表現等がございます。
苦手な方はご注意ください。












 天空界リュミエールを発ってから、三人はリベランディア王国を目指して道なき道を東へ、地図と太陽の位置から割り出した方角のみを頼りに歩き続けていた。

歩き続けて今日で四日目。
今は昼下がりで、高く高く昇っていた太陽は少しずつ西へと傾き始めている。

「三日も野宿だと、さすがに風呂とかベッドが恋しくなるなぁ」

疲れが溜まってきているようで、腿をトントンと叩きながらマルスが呟く。

三日も水を浴びる程度で風呂に入れない上に、草があるとはいえ堅い地面の上で眠っていると、風呂やベッドが恋しくなってくる。
おまけに、天空界でのもてなしや上等な部屋での宿泊を経験した直後であるがために、尚更その恋しい気持ちは大きくなっていた。

「どこかに街や村、ないの?」

「ちょっと待ってろ……」

パルに言われて、アイクは地図を取り出して周辺を調べる。
地図上では、三人の現在地周辺には森しか見当たらない。
次の大きな街まではまだ距離があり、行くまでには何日かかかりそうだ。

アイクは他に何か宿泊出来そうな所はないかと、周辺をよく見て見てみる。
すると、現在地からそう遠くない森の中に小さく村を示す印が描かれているのを見つけた。

「ここから数キロ程進んだ場所に、小さな村があるみたいだ。そこを目指してみるか? 小さな村だから、宿屋はないかもしれないが」

地図から顔を上げてマルスとパルに尋ねるアイク。

「行ってみようよ。風呂か、せめてお湯だけでも使わせてもらえれば、今は十分だしさ。ベッドはまだ我慢できるし」

「私も、同意見」

その村を目指そうとマルスとパルは答えた。

「それじゃあ、この村に向かうか。だいたい北東の方角だな」

アイクは地図と太陽の位置とを見比べつつ、村への方角を確かめる。

東から少し逸れて、三人は北東へと歩みを進めた。

「今日はあんまり天気良くないなぁ」

歩きながらマルスが空を見上げてそう言う。

今日の空は曇っていた。
青空は灰色がかった雲に覆われており、雨が降ってくるのも時間の問題だろう。
三人の頬を撫でていく風もどこかひんやりとしていた。

「一雨来ないうちに辿り着ければいいが」

雨粒が落ちてきていないか確かめるように、アイクは手のひらを空に向けてみる。
今のところはまだ雨は一滴も降っていないようだ。

「びしょ濡れは、やだ……」

パルも同じように手のひらを空に向けて言う。

以前、雪国ネジュス地方に向かった時にマルスの不注意で頭から水をかぶったことを思い出して、パルは少しだけ嫌な顔をした。
夏の暑い日でもないのに、服の上から水をかぶるのは気持ちのいいことではない。

「ちょっと早歩きしようよ。山が近いから天気がすぐ変わって、雨が降り出すかもしれないしさ」

マルスは先を急ごうと促す。

二人はその言葉に頷いて、マルスに続いて歩みを速める。

「お前、山が近いと天気が変わりやすいことは知っているんだな」

少し驚いたような顔をしてアイクが言うと、その隣でパルもこくこくと頷く。
マルスはそんな二人の様子にややムッとした顔をしながら口を開いた。

「オレだってそれくらい知ってるよ。オレの事、何だと思ってるの?」

「バカ」

何の迷いもなく二人は声を揃えて、マルスにその二文字の答えを返した。

「だってかけ算、出来ないし」

「一般教養すら危ういからな」

「うぅ……」

二人の言葉に言い返せないマルスは、小さく唸り声を上げて俯いた。
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