DESTINYー絆の紡ぐ物語ー

□第14章 幻惑【後編】
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※注意!

この章には、流血表現・残酷な表現が含まれます。

苦手な方、不快に感じるという方はご注意ください。












パルも、マルスやアイクと同じく森をさまよい歩いていた。

辺りを見回しても深い霧と、木しか見えない。

さっきまで一緒にいたはずのマルスとアイクの姿はない。

「二人共……どこ行ったの……?」

呟いてみるが、返事はない。

二人の返事どころか、アテナとも意思が通じない。

その上、いつもパルの耳には聞こえるはずの植物たちの声すらも聞こえない。

ただ感じるのは、漂う霧の邪悪さだけ。

「………………」

言い様のない気味の悪さと胸騒ぎがする。

不安で早くなる鼓動を抑えるようにパルは胸の辺りで手を握る。

その時、ふと誰かに呼ばれた気がした。

「……マルス?アイク?」

パルは眉をひそめながらも、その声らしきものがした方へと歩みを進める。

「そこに……いるの……?」

今度は自分の方から呼びかけてみる。

けれど、何も返っては来ない。

パルは他に頼るあてもないので、その声のようなものがした方へとひたすら歩く。

すると、また声がした。

今度はぼんやりとではなく、はっきりとした声だった。

『こっちだよ』

声と共に足音も聞こえる。

(この声……)

パルはその声に聞き覚えがあった。

「待って……」

遠ざかっていく声と足音を追いかけて、パルは走り出した。

だんだん足音との距離が近くなるのがわかる。

追いついた、そう思った時だった。

不意に辺りが光に包まれて見えなくなる。

パルは足を止めて、辺りを見回す。

すると、視線の先に幼い少女の影が見えた。

『行こう』

「え…私……?」

パルはこの声が、幼い頃の自分であることに気がついた。

『ねえ、行こう』

「行く……?どこへ……?」

『一番楽しかったあの頃へ』

いつの間にか幼いパルは目の前にいた。

そして、そっとパルの手を握る。

『一緒に来ればわかるよ』

「あ…っ……」

何か言い返す間もなく、幼いパルはパルの手を強く引いた。

そのままパルは光の先へと連れて行かれてしまった。
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