DESTINYー絆の紡ぐ物語ー

□第10章 再会
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マルスたちはヴュステ王国の城に入っていた。

城は外向的で、一階部分は一般人にも開放されている。

この国では毎日決まった時間だけ、一般人が女王に謁見出来る時間がある。

女王はまじないや医学に詳しく、よく一般人の重い怪我や病気を治しているのだ。

そのため、女王に会って怪我や病気を治してもらおうとやって来る者が多い。

「すごいな…!城って入るの、初めて……」

マルスは初めて見る城の中に、目を輝かせている。

パルも物珍しげに、辺りをキョロキョロと見回す。

ユーリはずっと田舎暮らしなために城はおろか、城下町すらも初めてだった。

そんな中で、アイクだけは特にこれといった反応を見せなかった。

「まぁ…グラドフォスよりはずいぶん小さいな…」

アイクはぽつりと呟く。

「アイクは、城って初めてじゃないのか?」

疑問に思ったユーリが尋ねる。

「アイクの家さ、グラドフォスって国の将軍家なんだ」

「だから、城は慣れてる」

マルスが説明し、アイクは頷く。

アイクは父の遣いなどでグラドフォスの城に行くことがたびたびあったため、城には慣れていた。

「そんなお偉いさんが一緒だったとは……」

「…別に気にはしなくていいからな」

敬うような眼差しを向けてくるユーリにアイクは言う。

「さーて、女王様はどこだろ?」

マルスはずんずんと城の奥へ歩んでいく。

他の三人もそれに続く。

少し歩くと、大きな階段の前に着いた。

女王のいる部屋はこの先らしく、兵士が立って見張っている。

そこに来て、マルスは途端に真面目な顔つきになる。

「アイク、必ず助けてやるからな」

マルスはアイクに一言そう言い、兵士に歩み寄る。

「あの、すいません」

マルスが思いきって、兵士の一人に声をかける。

「えっと…女王様にお会いすることは出来ませんか?」

慣れない敬語を使いながら、慎重に尋ねる。

「出来ぬ。もう女王陛下との謁見時間は過ぎた。出直して来い」

兵士は低い声でそう返してくる。

「…どうしても、今日お会いすることは出来ませんか」

先程よりも強めに言ってみる。

どうしても、今日でなくてはならないからだ。

アイクに刻まれた呪いは、もうすでに左胸まで達しかけている。

明日にはもう手遅れになってしまうかもしれない。

だから、どうしても今日でなくてはならない。

「一般人の謁見時間はもう終わりと言ったであろう?無理だ」

「そこを何とか!お願いします!」

マルスは焦るような顔をしながら頼み込む。

「大事な友達の命が危ないんです!お願いします、会わせて下さい!」

「ええい!無理だと言っているであろう!帰れ!」

兵士は強い口調で言う。

「…っ…友達が明日死ぬかもしれないってのに、それを見捨てろってことですか!?」

マルスはぎゅっと拳を握りしめて、敬語など忘れて声を荒げる。

「それは貴様の都合であろう!女王陛下は先程まで庶民の治療をなされ、大変お疲れになっている!」

兵士も同様に声が荒くなってくる。

「そんな陛下に庶民の、ましてやどこの馬の骨かもわからぬ旅人の治療など……」

兵士がそう言っている時。

「騒がしい!何事だ!」

兵士の言葉を遮るように、階段の上から凛とした声が響いてきた。

マルスたちは階段の上を見上げる。

上からはゆっくりと、一人の女性が降りてくる。

「騒がしいと思って来てみたが…一体何事だ?」

「こ、これはラティオ様……」

兵士は慌ててその女性の前に跪く。

「実は、この者が女王陛下にお会いしたいと……」

兵士はマルスを見やりながら言う。

「ほう…謁見時間はとうに過ぎているはずだが?」

その女性はマルスに目を向けて言う。

「わかってます。でも、どうしても、今日お会いしたいんです」

マルスは真っ直ぐな目をして答える。

真っ直ぐ目をそらさないマルスを見て、その女性はマルスの並々ならぬ想いを感じた。

「……用件を申せ」

「オレの大事な友達が、死の呪いに命を蝕まれています。もう時間がありません。明日では、遅いんです」

「呪い…か…」

「ずっと一緒に育ってきた、大事な…大事な友達なんです。だから……」

マルスはほんの一瞬だけ、泣きそうな顔をした。

だが、ここで泣いては意味がないと思い、必死にそれを抑えていた。

その女性には、そんなマルスの想いが手に取るように感じられた。

「……君、名を何と申す」

「マルスです」

「そうか。では、マルス。仲間を連れて私と共に来い。陛下に会わせよう」

女性は少しだけ笑みを浮かべて、マルスに言った。

「ラティオ様…よろしいのですか?」

跪いていた兵士が問う。

「よい。他人の命のためにここまで強い想いを抱ける者は久々に見た」

ラティオは兵士に向けて言う。

「今の世の中、金さえ払えば何とかなると思い込んでいる輩が多い。だが、彼は…彼の目は、己の命を捨てでも友人を救いたい、そんな想いがこもっていた。……その想いに応えてやりたくなっただけだ」

喜んでアイクたちに駆け寄るマルスを見やりながらそう言う。

「行くぞ、ついてこい」

一声マルスたちにかけると、ラティオは階段を上がっていく。

マルスたちは慌ててその後を追った。
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