DESTINYー絆の紡ぐ物語ー
□第9章 同じ顔
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※注意!
この章は、途中に流血描写等を含みますので苦手な方はご注意下さい!
─魔界アヴィス─
ハデスの城の廊下を、アベルが歩いていた。
向かうのは城の出口だ。
「あらリンゴちゃん、どこ行くの?」
不意に後ろから声をかけられる。
「地上界だよ。あと、ボクはリンゴじゃないからな!」
アベルは後ろを振り向き、答える。
そこにはルナが立っていた。
「地上界ねぇ……」
「あいつらを倒しに行くんだ」
獲物に狙いを定めたかのような目をするアベル。
「…それなら、リンゴちゃんに届けてもらおうかしら」
「いちいちリンゴって言うなよな!……何を届けろって?」
そう尋ねるアベルに、ルナは何かを企んだ笑みを見せる。
「あの勇者たちに、あたしからの魔法の贈り物をね」
「魔法…?」
「リンゴちゃん、手を出して」
ルナに言われ、アベルは右手を出す。
しつこいので、リンゴと言われたことにはあえてつっこまなかった。
ルナは出されたアベルの右手のひらに、自分の手を重ねる。
そして、何かを念じる。
すると、ルナの手から禍々しい黒い光が溢れてくる。
その黒い光は、重ねたアベルの手に吸い込まれていく。
「うわ…っ…ちょ、なんだよこれ!」
アベルは少しだけ恐れを感じて、咄嗟に手を引こうとする。
「離さないで」
引こうとするアベルの手を、ルナが掴んで逃さない。
「ちゃんと届けてもらわないとねぇ……。はい、もう離して大丈夫よ」
そうルナに言われて、アベルは慌てて手を引っ込める。
「なっ、何だったんだよ今の!?」
「ふふ、ちょっとした呪いよ。呪い」
「呪い!?」
アベルは素っ頓狂な声を上げる。
「大丈夫よ、リンゴちゃんにかけたわけじゃないから」
「なんだ……」
「リンゴちゃんには、あの勇者たちにその呪いを届けてほしいの」
「はぁ?なんでボクが……」
「いいじゃない。行くついでってことで。じゃあ、よろしくねぇ」
「あ、おい!」
アベルの返事を待たず、ルナはすたすたと廊下の奥へと行ってしまった。
「はぁーあ、めんどくさ…」
アベルは重く溜め息をつく。
そして、自分の右手を見る。
そこにルナの呪いが込められていると思うと、少し鳥肌が立ちそうだ。
「……ま、いっか」
アベルは顔を上げて歩き出す。
「さーてと、一暴れしてくるか!」