DESTINYー絆の紡ぐ物語ー

□第4章 お前は誰だ?
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 シュトゥルム大氷窟から戻った翌朝、三人は魔界への入り口があるというエストリア帝国を目指す事を当面の目標として、ネーヴェの町を発った。

ネーヴェの町から南西の方角に三人が通って来たものと異なる、グラドフォス地方とは別の地方に繋がる交易路の存在を地図で確認しており、三人は今そこを目指して雪道を進んでいる。

南西の交易路を抜けて何日か南下していけば、ここから一番近い港町に着く事が出来る。

エストリア帝国はグラドフォスのある大陸からかなり離れており、陸を歩いて海を渡る事を繰り返して行かねばならない。
まずは一つ先の大陸に辿り着くため、三人は港町を目指して進んで行く。

「ねー、交易路まであとどのくらいかかるの?」

「その質問、数分前にも、そのまた数分前にも聞いたぞ。何回も言わせるな、まだまだかかる」

気怠げな声で投げかけられたマルスの質問に、アイクがうんざりしたような溜め息をこぼしながら答える。

交易路まであとどのくらいかかるのか、という質問を投げかけられたのはこれで何度目だろうか。

ネーヴェの町からここまでの一、二時間、両手でも足りない回数なのは確かだ。
耳にタコが出来るほどその質問をされ、そのたびに答えていたアイクはうんざりしていて当然だった。

「だいたいお前、この前はあんなにはしゃいでいたじゃないか」

「だって寒いし、あっちを見てもこっちを見ても雪、雪、雪! あちこち真っ白で飽きてきた……」

アイクが言うように、ついこの前までは一面の雪景色にはしゃいでいたマルスだったが、飽き性な彼はこの白と灰色ばかりが目に入る景色に飽きを感じているのだ。

雪の白に反射する日光が眩しく、マルスは寝起きの時のように細めた目で恨めしそうに足下の雪を見下ろした。

彼の飽きっぽさにアイクとパルは小さく溜め息をこぼす。

とはいえ、刺すような寒さと代わり映えのしない白と灰色の景色、そして炎の魔石の力で幾らか溶かされているが歩きにくい雪道にはアイクとパルも嫌気が差してきており、その点では彼と気持ちは一緒だった。

一体この雪の中をあとどれだけ歩けばいいのかと考えたアイクは、かじかむ手で地図を広げて現在地と交易路の場所を確認する。

「地図だと、交易路の洞窟まではまだかかりそうだな。軽く三十分は覚悟しておいた方が良い」

「あぁ……」

アイクの言葉を聞いたマルスは、口から白い息とげんなりした声を吐き出しながら遠い目をする。
雪にも負けないほどに彼の顔は生気を失って白くなっていた。

まだまだこの一面白と灰色の世界を歩き続けるのかと思うと、アイクもパルも気が遠くなった。

 グラドフォスも勿論、冬には雪が降るが、このネジュス地方の雪の量に比べれば大したものではない。
それに加え、白と灰色が多い中に木や枯れ葉の茶色、冬に咲く花の色、時折見える晴れ空の青色などの様々な色が景色のアクセントとして存在していた。

だから、グラドフォスにいた時は冬の雪景色に飽きる事はまず無かったのだ。

しかし、ネジュス地方はその雪深さのせいで見事なまでにほとんどが、雪の白と曇り空の灰色に覆われていた。

代わり映えのしない景色と寒さに、三人は進むたび口数が減っていく。
お喋りなマルスが口を開かなくなれば、アイクとパルも自分から話そうという気にはなれず、三人は無言のまま白い世界を進んだ。
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