DESTINYー絆の紡ぐ物語ー
□第2章 初めての町、出会い
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毒々しい紫色の空に浮かぶ紅い月。
光は届かず、何もかもを闇が支配する世界。
見る者によっては、まるで世界の終わりだと表す者もいるだろう。
――それこそが、魔界アヴィス。
かつて神アジェンダと戦い、封印された邪神ハデスが創り出した世界だ。
魔界の中心には、大きな城が存在感と威圧感を持ってそびえている。
城を構成する灰色の混凝土と夜の闇色をした屋根が紅い月の光を浴び、その城の不気味さと美しさの両方を醸し出していた。
その美しくも不気味な城の中で、ハデスは三人の旅立ちまでの様子を視ていた。
「この者達が、あの憎き神アジェンダに選ばれし勇者とやらか……。アジェンダめ……またしても私の邪魔を……!」
ハデスは神アジェンダへの込み上げてくる怒りを滲ませた声で呟く。
抑えきれない怒りで握り締めた拳には、爪が食い込んで血が滲みそうだ。
「見ていろアジェンダ。今度は負けはしない。お前が心底大事にしているこの世界を、必ずや破壊してくれよう……」
ハデスは形の良い、薄い唇にニタリと気味の悪い不敵な笑みを浮かべて呟くと、パチンと一つ指を鳴らした。
指を鳴らした音が闇に吸い込まれるように消えると、ハデスの前に四つの人影が現れた。
「我がアヴィス四天王達よ。この者達を始末しろ」
ハデスの前に現われたのは、彼の忠実な手先であるアヴィス四天王の四人だ。
驚いた事に、魔界に身を置き、ハデスに仕える者であるにもかかわらず、彼らは皆マルス達と同じ地上界の者だった。
ハデスは彼らの脳内に魔力を送り、マルス達の情報を伝達する。
「方法は好きで良い。私の邪魔になる神の選んだ者共を抹殺しろ」
ハデスは笑みを浮かべたまま、四人にそう命じた。
(とうとう、この時が来たのか……)
四人の中の一人、艶やかな黒髪をした端正な顔立ちの青年は胸中でそう呟きをこぼす。
彼の海のような深い青色の瞳が、どこか愁いを帯びた。
「勇者だか何だか知らないけど、ボクの方が強いね!」
マルス達を小馬鹿にしたように、鮮やかな赤色の髪が印象的な少年が笑う。
「所詮は平和惚けした地上界の人間……。我々の敵ではない」
暗い青色の髪をした少年が瞼を閉じて静かに言う。
その声はひどく冷淡なものだった。
「ほーんと、弱そうねぇ……。あたし一人でも十分じゃないかしら?」
傷みの無い艶やかな金髪をした少女が、紫のアネモネをそのまま閉じ込めたような瞳を細めて妖艶に微笑む。
「お任せ下さい、ハデス様。何人たりとも貴方の邪魔はさせません」
黒髪の青年がハデスに向かって敬礼する。
他の三人もそれに続いた。
「期待しているぞ、我が魔界アヴィスの四天王達よ……」
ハデスは楽しげに微笑を浮かべるのだった。