黄金色に輝く‐現在篇‐

□第陸話
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総悟君に連れてこられた場所は少し高い建物だった

その建物の屋根に上がり、下の景色が見えるところまで歩くと総悟君は座った

私も隣に座り下を見ると兄上と刀を持った銀時さんが見えた


「あ、兄上と銀時だ…」


そう呟いた瞬間、金属音が耳の中へと響いた

兄上が銀時さんに斬りかかったのだ

銀時さんは勢いよく吹っ飛び、屋根の端までと滑って行った


「銀時さん!!」

「蘭、落ち着いてくだせェ
落っこちますぜ」


前へと身体が乗り出してしまったので総悟君に止められた

少し取り乱してしまった私は一旦落ち着いて総悟君にお礼を言った

その時銀時さんはなんとか踏ん張ってまだ屋根の上に居る

ふぅ…良かったです

あれ?何か話してますね

少し聞こえずらい話し声に耳を傾ける


「ゴリラだろーがなァ
オレたちにとっちゃ、大事な大将なんだよ
こいつ一本で一緒に真選組つくりあげてきた
俺の戦友なんだよ」


刀を前に翳して話す兄上の姿はとても凛々しかった

その言葉に私はじわっと目に涙が浮かんだ


「兄上…」


「誰にも俺たちの真選組は汚させねェ
その道を遮るものがあるならばこいつで……」


兄上は間を置いて


「叩き斬るのみよォォ!!」


銀時さんに斬りかかった

だがそこには銀時さんはおらず、代わりに屋根の瓦が吹っ飛んだ

そのせいで砂埃が舞う中、銀時さんが跳び蹴りで現れた


「刃物プラプラ振り回すんじゃねェェ!!」


見事跳び蹴りは兄上の横顔に命中し、お互い宙に舞った

その時、兄上はニヤッと笑うと下から銀時さんの肩を斬る

そして二人は背中から屋根の上へと落ちた

ガラガラと音を立てたことで屋根の修理をしていたオジサンが異変に気付いた


「銀さーん!てめっ遊んでたらギャラ払わねーぞ」

「うるせェハゲェェェ!!
警察呼べ警察!!」

「俺が警察だよ」

「あ…そうだった
…世も末だなオイ」

「クククそうだな」


立ち上がる二人を私はごくりと唾を飲み込んだ

今のところ兄上しか刀を使っていないけれど銀時さんはどうするのでしょうか…

もしかして自分が狙われているのにも拘らず
兄上を気遣っているのでしょうか…?

だが私の思ったことは銀時さんが刀を抜いたことで裏切られた

遂に刀を抜いたことで兄上はフッと笑い、助走をつけて斬りかかった


「うらァァァァァ!!」


叫びながら斬ったが斬れたのは銀時さんではなく真っ二つになったタオルだった

その瞬間、兄上の隣に銀時さんが現れた

かわされた!!兄上が斬られ…


ザゥン

反射的に瞑ってしまった瞼をそぉっと開けると滴る血ではなく先の方だけ下に落ちた刀だった

銀時さんの行動に兄上は目を丸くしていた


「はァい、終了ォ」


それだけ言って銀時さんは兄上に背を向けて斬られた肩を押さえながら歩き出した

だが兄上は呼び止めた


「…てめェ、情けでもかけたつもりか」

「情けだァ?そんなもん、お前にかける位ならご飯にかけるわ」


振り向かず話す銀時さんに兄上も私達も黙って聞いた


「喧嘩ってのはよォ
何か護るためにやるもんだろが
お前が真選組を護ろうとしたようによ」

「…護って
お前は何、護ったってんだ?」


兄上の問いかけに銀時さんは顔だけ振り向いた


「俺のルールだ」


それだけ言って銀時さんは去って行った

その姿に私は目を細めながら見つめた


「…護るもの」


ポツリと呟くと隣に居る総悟君がフッと笑った


「…フフ面白ェ人だ
俺も一戦交えたくなりましたぜ」

「やめとけ。お前でもキツいぞ、総悟」


何時からいたのか後ろには近藤さんが立っていた


「アイツは目の前で刃を合わせていても全然別のところで
勝手に戦ってるよーな男なんだよ
勝ちも負けも浄も不浄も超えたところでな」


近藤さんが真っ直ぐ見つめる先には寝ころぶ兄上の姿があった

その時の兄上の表情は少しだけ緩んでいた


「さっ、もう済んだことだし帰ろーか」

「というか近藤さんが起こした問題じゃねェですかィ」

「あ、えーっ、と…
あはは、そうだっけ?」

「まぁそのおかげで面白いやつに会えましたけどねェ」


惚ける近藤さんと楽しそうに微笑む総悟君の後ろを私は着いていくために歩き出した

だがふと銀時さんの言葉を思い出し、歩みを止める

振り向くと青い空により一層蘭の青い瞳が濃くなった

その青い空を見つめながら目の前で靡く長い髪を耳にかけた


「私の護るものは…」


兄上が私の護るもの

これはずっと前から決めている私の役目

確認するかのように心の中で呟いて歩き出した
前へ  

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