黄金色に輝く‐現在篇‐

□第肆話
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「ここですか…」


大江戸警察署と書かれた門をサングラスを少し上にずらしながら見上げる

着流し姿の私は兄上に悩みを打ち明けた次の日、大江戸警察署にきていた


「近藤さんに頂いた休みがあって良かったです
でもまだそんなに仕事をしてないのに非番って早いんですねぇ」


近藤さんから貰った休みを利用してここに来たのだ

真選組の非番は早いんだなと思っているが実は蘭に甘い近藤は初めての仕事で疲れているだろうからと休みを与えたのだ

そんな近藤の甘さには気づかずに勘違いをした私は門の下をくぐった










大江戸警察署の中に入り、私は受付にいる図体がでかい男に真選組の警察手帳を見せながら声をかけた


「すみません
私、真選組に所属する副長補佐役の零季蘭と申します」

「…サングラスをとれ」

「し、失礼いたしました」


私は謝りながらサングラスを外した

すると私の顔を確認した男は頬を染めた


「土方副長から連絡は受けている
案内する。中に入れ」

「ありがとうございます」


奥にある扉を男に開けてもらい、案内してもらった

途中すれ違う人たちにじっと見つめられた

やっぱりこのサングラスは似合わないのですかね…

でも兄上はつけとけって言われましたし

そう思いながら男についていき、角を曲がると
取調室と書かれた扉があった

そしてその取調室の中が見れるようになっている窓に気づき、私はそっと中を覗いた

すると例の銀髪の男がめんどくさそうな顔をしながら座っていた

あ!あの人が居ます

窓を覗いているに気づいた警察の男はその窓に指を指した


「これは特殊なガラスで出来ていて外からは中が見れるが中から外は見えないんだ」

「本当ですか?!そんなものがあるなんてすごいですね!!」


目を輝かせながらガラスを見つめる私を見て男はまた頬を染めながら可愛いと思った


「あの、入っても宜しいでしょうか?」

「あぁ、いいぞ」


またもや男に開けてもらった扉から入ろうとしたら銀髪の男は鼻をほじっていた

机の上には足を置いて組んでいる


「また取り調べかよ
だから俺はなんも関係ねぇんだよ
いい加減わかれ…」

「こんにちガターン!!

「Σだ、大丈夫ですか?!」


微笑みながら挨拶をしようとしたら銀髪の男は盛大に椅子から落ちた

びっくりした私は銀髪の男の元にかけつけると男は眉をハの字にしながら笑った


「あはは、大丈夫大丈夫
少しびっくりしただけだから」

「それにしてはものすごく驚いたように見えましたのですが…」

「だって蘭ちゃんから会いに来てくれるとは思ってなかったから」

「やはり、私のことをご存じなのですか?!」


立ち上がって倒れた椅子を元に戻しながら話す銀髪の男に私は話に飛びついた


「銀さんのこと覚えてないの?」

「はい…実はあなたのことは覚えていないのです
それで本日、貴方とお話をしたくてに会いに来たのです」

「そっか…
あ、俺のこと知らないなら自己紹介するわ
坂田銀時っつーんだ
なんか俺にとっては変な感じがするけどよろしくな?蘭」


会いに来た訳を話すと坂田さんは悲しそうな顔で無理やり作ったような笑顔をした

昨日の池田屋と同じ顔…

なんでそんな悲しそうな顔をするんですか…?

「お話をお聞かせください」





「前に会ったことがあるんだ」


私と坂田さんは机を挟んで向かい合いながら座っている


「最近じゃなくて数年前にね」

「!江戸じゃないんですか?
じゃあどこで…」

「あれは確か攘夷戦争真っ最中だったかな」

「攘夷戦争…」


確か攘夷戦争って天人と攘夷志士達が戦っていた戦争でしたよね…

ということは師匠と暮らしていた時?

私はその頃を思い出しなが銀時の話を聞いた


「そんでその時代に俺は森の中で倒れている蘭に会ったんだ」

「それは本当ですか?!」


私はガタッと勢いよく立った


「あぁ、しかも記憶を無くしていた」

「え…」


記憶を無くしていた…?

しかも森の中で倒れていたなんて…

そんなことあったでしょうか?

私は立ったまま、顎に手をあてながらなんとか思い出そうとした

すると一つだけ思い当たることがあった


「そういえば攘夷戦争が始まっていた時に私、一度だけ天人に追われたことがあったんです」

「そん時は野蛮な天人が居たからなぁ
まぁ今もいるけど」

「えっと、それで確か…
逃げている途中に崖から落ちたような…」


私は天人に追われていた記憶を辿りながら話しているとその記憶の最後を思い出した

その記憶には森の中に長い階段がありそこを上がっていくとと古い建物が立っていた


「あ!もしかして私の手当をしてくださったのは坂田さんなのですか?!」

「確かに手当はしたが俺じゃなくて違うやつがやった」

「あぁ!私、やはり勘違いをしていたみたいです…」

「勘違い?」


頭を抱えながらショックを受けている私に坂田さんは遠慮がちに聞いた


「はい。私、天人に追われている途中に崖から落ちて目を覚ますと知らない建物の近くで倒れていたんです
それでその時、私は天人に捕まったと思ってその場から逃げたのです」

「だからいなかったのか…」

「でも後から気づいたのです
丁寧に手当をしていてくれたことに…
そして三か月も立っていことが」


蘭の記憶では崖から落ちた後に天人に捕まり、敵の本拠地か何かの建物に人質として捕まったと思い込んでいたらしい

危機感を感じたは蘭は目を覚ますとすぐにその建物から逃げ出したのだった

だが真実は崖から落ちた蘭を銀時が見つけ、連れて帰り手当をしたのだ

その時に目を覚ました蘭は記憶を失っていた


「そんでとりあえず俺たちは蘭の面倒を見てたわけ
でもその日から三か月後に蘭は姿をくらましたんだ」

「そうだったのですか…
申し訳ありませんでした!!」


私は椅子から地べたに移動して頭を地につけた

いわゆる土下座だ

それを見て坂田さんは「え、え?!」と戸惑いながら私の前にしゃがんだ


「なんで土下座するの?!蘭ちゃんが土下座されるなんて銀さん見たくないからやめてぇえええ!」

「いえ!私はこれぐらいはしないと気が収まりません!!
命の恩人を天人だと勘違いして逃げるなんて!!!
どうお詫びすればいいのやら!!!」


地べたに向かって謝罪する私に坂田さんは小さい声で「じゃあさ…」と呟いた

その呟きが聞こえた私は顔をあげるとそこには優しく微笑む銀時がいた


「また昔のように下の名前で呼んでくんね?」

「え…?」

「まぁ、蘭は覚えてないと思うけど記憶がなかった蘭は銀時さん"って呼んでたんだよね
だからさ、そう呼んでくんねぇかな?」

「そんなことで宜しいのですか…?」


意外な坂田さんの要求に私は驚きを隠せなかった


「あぁ、いいんだ
俺はそれだけで充分だ」


坂田さんは私に土下座をやめさすと抱きしめた

またです…この人に抱きしめられると落ち着く…

兄上と似ている感じがしてきます

まるでどこへにも行かせないように抱きしめる坂田さんの大きな背中に手を回し、私も抱きしめ返した
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