黄金色に輝く‐現在篇‐

□第弐話
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青かった空は段々赤に染まっていく

そんな空を蘭は縁側に座りながら見つめていた


(綺麗…江戸の空も素敵だね…
それにしても兄上達と久しぶりに会えてとっても嬉しかったなぁ)


ニコニコとしていると土方が歩いてきた


「嬉しそうだな。なんかいいことでもあったのか?」


土方は蘭の隣に座り、ポケットからタバコを出して火をつけた


「ふふっ確かに私にとってはいいことですね」


笑う蘭に土方は首を傾げた


「今日兄上達に会えて嬉しかったんです
とてもお久しぶりだったので」

「あぁそういうことか
だがまぁ…その…俺も嬉しかったぞ…///
久しぶりにお前に会えて…///」


照れながら口ごもる土方を見て蘭は一瞬驚いた顔をしたがすぐににっこりと笑った


「ありがとうございます」


蘭は照れる土方を見つめた後、また赤い空を見つめた


「それにしても兄上達は変わりましたね」

「そうか?俺はあまり変わったとは思わんが」

「変わりましたと思いますよ?
総悟君は相変わらず素直なところは変わりませんがとても大きくなっていました
昔は小さくて可愛らしい男の子だったのに」

「まぁ確かに成長はしたが…」
(変わったのは外見だけで生意気さはそのまんまなんだが…)

「あ、でも近藤さんは何も変わっていませんでしたね
とてもお優しく相手のことを思って行動してくれるところが」

「近藤さんはお人好しだからな」

「ふふっそうですね」


お互い笑っていると蘭は土方の方を見た


「ですが兄上が一番お変わりになられましたね」

「そうか?」

「はい。昔、兄上はあまり人とは話さなかったのにここの人たちとは楽しく話していらっしゃって…安心しました」

「楽しくはないが仕事のこともあるしな…」

「あとそんなところも含めてもっと大人らしくなりました
髪の毛を切ったせいでもありますかね?」

「仕事の時に長かったら邪魔だと思って切ったんだ」

「私もこれからお仕事とかあるでしょうし、切りましょうかね?」

「!!」


おろしている髪の毛の一部を持ち上げながら見つめる蘭に土方は焦った


「いやいやいやいやいや!お前はそのままでいい!!!切る必要はねぇ!!」

「そうですか?ではこのままにしておきます」


ぶんぶんと手を振りながら止める土方に蘭は不思議そうな顔をしながらも切る考えをやめた

それを見た土方はばれないようにホッと一息ついた


(あぶなかった…もう少しで蘭の綺麗な髪が切られるとこだった…)


土方は改めて蘭の髪を見た

蘭の金色の髪の毛は夕日の光に負けず輝いていて座っているせいで地べたについている


(昔と変わらずほんとに綺麗だ…)


しばらく見つめていると土方は「そういえば」と言った


「さっきから思ってたんだがそれ…
俺のだよな?」

「え?あ、これですか?
はい、そうですよ」


土方は指を指しながら言った

それは蘭の着ている着流しだった

蘭は女物ではなく男物を着ていた


「明日、着物も買ってやるよ
かなり前のやつだし、男物だろ?」

「お気遣いありがとうございます
ですがこれでいいのです
私は兄上が着ていた着流しを見ているととても安心して…
だから着ているんです
髪の毛も本当は兄上に憧れて伸ばしていましたし」

「そうか…わかった
だが一応着物は買うぞ」

「あ、ありがとうございます!」


照れながら微笑む土方に蘭は笑顔で答えた


「なーにいちゃついてるんでィ、土方コノヤロー」

「Σうおっ?!って総悟か…
びっくりさせんな」


土方の後ろに沖田が立っていた


「別にいちゃついてなんかいねぇよ」

「ほんとですかィ?鼻の下伸ばしてデレデレしてたのにムッツリ土方」

「してねぇよ!!!テメェまじで切るぞ!!!!!」


土方は立ち上がり沖田といがみ合い始めた

蘭も立ち上がり土方を宥めた


「そうだよ、総悟君
兄上とは義兄弟だけどそんなことがあるわけないよ
しかも私なんかに」


蘭は口元を抑えながら「もう総悟君ったら」と言いながらクスクスと笑った

そんな蘭を見つめながら二人は「冗談じゃないんだけど…」と思った

沖田は土方といがみ合うのをやめ、蘭に向き合った


「てゆうか俺は土方さんを相手にしてきたんじゃねぇんですよ」

「俺だってお前なんか相手にしたくねぇわ!」

「近藤さんが先に風呂に入ってくれって言ってやしたぜ」

「え?お先にいいの?私なんかが先に入っちゃって…」

「そこは気にしなくても大丈夫
近藤さんはレディーファーストって言ってやしたし
俺も野郎達の後に蘭が入るのはいやですしね」

「それもそうだな
蘭、今から入ってこい」

「わかりました
それではお言葉に甘えさせてお先にお風呂に入ってきます」


蘭はお辞儀をしてその場を去ろうとした時、沖田が呼び止めた


「長旅でお疲れでしょうから俺が蘭の背中を…」

「入らしてたまるか!」

「いてっ!俺は親切に蘭を気遣って…」


土方は沖田の頭を叩いた

叩かれた沖田は頭を押さえながら土方を睨み付けた


「完全に違うよね?!親切心じゃなくて違う何かだよね?!」

「ふふっ総悟君ありがとうね
でも私は大丈夫だから
それでは入ってきますね」


今度こそ蘭は去っていった

土方は後姿を見つめた後、ため息をついた


「あいつほんとに鈍感過ぎだろ…」

「まぁ苦労はしやすがそこも蘭の可愛い所でさァ」

「…まぁな」

「では蘭も行ったことだし、俺も風呂に…」


沖田も去ろうとするが後ろから何かに引っ張られて進めなかった

振り向くと土方が沖田の後ろの襟を掴んでいた


「行かさねぇよ」

「チッ」


その後隊士達が風呂場を覗こうとした所に刀を振り回した土方に追いかけられたことや
新しく局中法度に「零季蘭に手を出さないべし 逆らえば切腹」が加わったことは蘭こと本人は知らない
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