黄金色に輝く‐現在篇‐

□第拾話
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寒い空気が暖かくなっていくと共に屯所の庭に生えている木々たちがピンク色に染まってゆくこの時期
私はこの時期が一番好きです
そう思いながら自室で仕事をしている兄上のためにお茶を淹れて、お盆にのせて廊下を歩いていた
そして自室まで来ると襖が開かれていた


「兄上、お茶を淹れてまいりました」

「あぁ、ありがとな」


筆と書類が置かれている机の上に湯気が立ったお茶をコトっと音を立てながら置くと兄上はジッと中を覗いた


「どうしたのですか?」

「蘭、見ろ
桜の花びらが入ってる」

「まぁ、いつの間に入ったんでしょうか
すみません。今すぐに淹れなおしてきますね」


私はお茶を直ちに新しいのにしようと手を伸ばしたが兄上が先に取ったことで私の手が空を切った


「いや、これでいい
せっかくお前が淹れてくれたお茶だ
勿体ねぇだろ」

「ありがとうございます
それにしても今日はとてもいい天気ですねぇ」

「そうだな」


二人で中庭に生えている桜の木を見つめた
こんな時は皆さんと花見をしたいです
きっと楽しいでしょうね
そんなことを思いながら頬を緩ませていると兄上が「そういや」と呟いた


「今度の日曜日に花見をやろうと思ってるんだ」

「っえ?花見ですか?」


こういった行事はできないと思ってたのですがするんですね
驚きました


「あぁ、この時期になると毎年、真選組の奴らと花見をやるんだ
それでだな、すまんがお前に頼みがあるんだが」

「頼みとは?」

「実はお前に花見に持っていく弁当を作ってほしいんだ
本当は食堂のおばちゃんらに頼みたいんだが休みでな
そうなると食べものだけなしの花見になるんだ」

「それなら私でもお役に立てそうです!
有難く引き受けさせていただきます!!」

「量はかなり多いが大丈夫か?
俺は料理はできないが出来るだけ手伝うが…」

「そこなら問題ありません!
むしろ料理のし甲斐があって嬉しいです!」

「そうか、そう言ってくれると助かるわ
じゃあ作るのに時間が掛かるだろうから土曜日は休みにしておく」

「ありがとうございます
明一杯、頑張らせていただきますね!」


私はその後、土曜日までお弁当のおかずを何にするかずっと考えた
そして遂に前日の日を迎え、私はスーパーで買ってきた大量の材料が入ったビニール袋を両手に持ちながら食堂へと向かった


「これで足りるでしょうかねぇ」

「何が足りるんでィ?」

「わっ!そ、総悟君?」


後ろからビニール袋を覗く総悟君にいつからいたのかしらと思いながら足を止めた


「これはね、明日のお弁当の材料なの
皆さんの分を作らないといけないから沢山いるんだ」

「こんなに買うなら言ってくだせェ
車、出しやしたのに」

「大丈夫だよ?こう見えて私、毎日鍛えているからこれぐらい平気っ」


力があると証明させるように両腕にぶら下がったビニール袋を持ち上げる動作をするとひょいっと両方とも持っていかれた


「それでもこんなに重い物はやめときなせェ
って、重っ!!」

「やっぱり私が持つから総悟君は無理しなくていいよ」

「こ、これぐらいなんともないですぜ…」


総悟君のプルプルと震える腕に心配したがあまりにも総悟君の姿が頼もしくて不覚にも頬を緩めてしまった


「総悟君は本当に頼もしくて優しい子だね」

「っ///」

ニコッと笑うと総悟君はぷいっと顔を逸らされてしまった
だがチラッと見えた耳は赤くなっていた

そしてその後、食堂に着いて料理を開始し、たまにつまみ食いする総悟君を注意しながら夜遅くまで弁当作りに励んだ
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