黄金色に輝く‐現在篇‐

□第玖話
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「えー。みんな、もう知ってると思うが
先日、宇宙海賊春雨"の一派と思われる船が沈没した」


私は今、広間に集合させた隊士達の前で報告する近藤さんの隣に座って話を聞いていた


「しかも聞いて驚け、コノヤロー
なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい……
…驚くどころか誰も聞いてねーな」


真剣に話す近藤さんを無視して隊士達は私語をしていた
私は皆さんに注意をしようと立ち上がろうとした時、近藤さんに止められた


「トシ」


近藤さんの呼びかけに応じた兄上はどこからかバズーカを出して一発、放った
私は以前、このバズーカで怪我人などが出ないかと心配していた
だが近藤さんが前に皆さんは身体が丈夫だから大丈夫と言っていたので最近は気にしなくなった


「えー。みんな、もう知ってると思うが
先日、宇宙海賊春雨"の一派と思われる船が沈没した
しかも聞いて驚け、コノヤロー
なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい…」


近藤さんの発言を聞いた隊士達の驚いた声が焼けたにおいが漂う広間に響き渡った
しかしその隊士達のリアクションが気に入らなかったらしく兄上はもう一発、撃とうとした


「この二人のうち一人は攘夷党の桂だという情報が入っている
まァ、こんな芸当ができるのは奴ぐらいしかいまい
春雨の連中は大量の麻薬を江戸に持ち込み、売りさばいていた
攘夷党じゃなくても連中を許せんのはわかる
だがここからだ

その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚かんでいたとの噂がある

麻薬の売買を円滑に行えるよう協力する代わりに利益の一部を海賊から受けとっていたというものだ
真偽のほどは定かじゃないが江戸に散らばる攘夷派浪士は噂を聞きつけ『奸賊討つべし』と暗殺を画策している」


田舎から出たばかりの私にはまだこういった話は聞いていて難しいがとても大きな仕事だと感じた
そう静かに感じる私と黙って聞く隊士達から作り出された静かな居間に近藤さんの合図がはっきりと聞こえた










「こんの野郎は…」


場所は変わり、真選組は幕府の高官を援護するために大きな屋敷へと来ていた
隊士達が自分の持ち場へと行き、敷地内を警備する中、私と一緒に護衛をする兄上と総悟君がいた
だが総悟君はいつの間にか寝ていたらしく愛用のアイマスクをつけていた


「あらあら、総悟君、寝ちゃっていますね」

「こいつ、寝てる時まで人をおちょくった顔しやがって
オイ。起きろ、コラ
警備中に惰眠をむさぼるたァ
どーゆー了見だ」

「ふふ、総悟君もまだまだ子供ってことですよ
ですが流石に今は仕事ですので可愛そうですが起こさないといけませんね」


私は総悟君に呼びかけながら肩をゆすると起きたらしくアイマスクを下にずらした


「なんだよ、母ちゃん。今日は日曜だぜィ
ったくおっちょこちょいなんだから〜」

「総悟君、今日は火曜日だよ?」

「あれ?ほんとですかィ
でも寝みィんで母ちゃんも一緒に寝やしょうぜィ」


総悟君は寝ぼけているらしく私に抱き付き、もう一回眠りに着こうとした
それを兄上は阻止しようと総悟君のスカーフを掴んで立ち上がらせた
それを私も立ち上がりながら眺めた
ふふ、総悟君のお母さんってなんか嬉しいです
微笑ましく二人を見つめていると後ろからやってきた近藤さんの鉄拳が二人の頭上に降り注いだ


「仕事中に何遊んでんだァァァ!!
お前らは何か!?修学旅行気分か!?
枕投げかコノヤロー!!」


大声で怒鳴る近藤さんの頭上も鉄拳を食らった


「お前が一番うるさいわァァァ!!
ただでさえ気が立っているというのに」

「あ、すみません」


近藤さんに食らわしたのは今回、護衛をする幕府の高官、禽夜様だった
この屋敷に来た時から禽夜様は苛立っているらしくさっきの近藤さんの怒鳴り声より大きかった


「まったく役立たずの猿めが!」

「禽夜様、騒いでしまい申し訳ありません」


私は怒りを収めるため禽夜様に深々と頭を下げた
すると頭を上げると禽夜様は私の方を見ていた
だが禽夜様の目線は下の方へと向いていたので私はどうしたのだろうと首をかしげた


「オイ、女。そのグラサン取れ」

「あの、禽夜様。少し事情があって…」

「俺はこの女と話しているんだ!
お前は黙っておれ!
ほれ、女、はやくとれ」


禽夜様に話しかけた近藤さんはまた怒られ、私は幕府の方なので仕方なく承諾した


「わかりました」


敵じゃないのか確認するためでしょうか?
私はそう思いながらサングラスを外した
すると禽夜様はニヤッと笑い、顎に手をあてた


「ほう、猿でも上玉だな。いい女だ」

「ふふっ、ご冗談はよしてくださいよ、禽夜様
私は根っからの田舎娘です…ひゃぁあ?!」


ぬめりとした感触が頬から伝わり、私は驚きで声を上げてしまった


「き、禽夜様ぁあああああ?!」

「ふむ、味も中々だな」


どうやらぬめりとしたものは禽夜様の長い舌だったらしく、口の中にしまっていった
私はなぜなめたのかわからず、なめられた頬に手をあてながら頭の周りに?を浮かばせた


「よし、お前は特別に俺の側にいさせてやる」

「へ?あ、ですが私は見回りの仕事が…」

「これは光栄なことだぞ
俺の側にいれるのだからな」


そう言って禽夜様は私の腰に手を置き、肩が密着するまで引き寄せた
立場上、私は従うことにし、苦笑しながら禽夜様と歩いた
そしてその去っていく二人の姿を近藤達は見送った


「なんだィ、ありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」

「お前は寝てただろ」

「幕府の高官だかなんだか知りやせんがなんであんなエロガマ、護らにゃイカンのですか?」


不満を漏らす沖田に近藤は答えた


「総悟。俺たちは幕府に拾われた身だぞ
幕府がなければ今の俺達はない
恩に報い忠義を尽くすは武士の本懐
真選組の剣は幕府を護るためにある」


近藤は拳を握り、厚く熱弁した


「だって海賊とつるんでたかもしれん奴ですぜ
どうものれねーや。ねェ、土方さん?」

「俺はいつもノリノリだよ」


土方は懐からタバコを取り出しながら答えた


「アレを見なせェ。みんな、やる気なくしちまって山崎なんかミントンやってますぜ、ミントン」


沖田の向いている方を見ると隊士達は自由に歩き回ったり駄弁っていた
そんな中、山崎はラケットを持って素振りをしている
それを見た土方は鬼の形相で山崎を追いかけていった


「総悟よォ。あんまりゴチャゴチャ考えるのはやめとけ
目の前で命狙われてる奴がいたら、いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる
それが人間のあるべき姿ってもんだよ」


そう話した近藤は向かい側にある廊下を歩いている禽夜と蘭を目にすると急いで駆け寄った
その近藤の後姿を沖田は見つめながらため息をついた


「底無しのお人好しだ、あの人ァ」
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