黄金色に輝く‐現在篇‐

□第漆話
1ページ/2ページ

兄上と銀時さんが刀を交えた日以来、相変わらず近藤さんの怪我は無くならなかったがどこか嬉しそうな顔で帰ってくるのでそっとしておくことにした

そんないつも通りの日々に戻った屯所に私はテレビが置いてある部屋でお茶を飲んでいた

テレビのチャンネルはニュースにしており、コアラを抱いているハタ王子が映っていた


「この動物、とても可愛らしいです」


ずずっとお茶を啜り、ジッとコアラを見つめた


「大江戸動物園ですかぁ
一度でいいですから行ってみたいですね」


でも中々いけませんでしょうし…

よし、とりあえず今日は一日中休みですし…!

リモコンでテレビの電源を切り、立ち上がった


「公園にいきましょうか」










「あら」


いつもの着流しを着て公園に来ると神楽ちゃんが元気よく大きな犬と走り回っていた


「定春ぅ〜!!こっち来るアルよ〜!!」


笑いながら走る神楽ちゃんと定春という犬を目で追っていると遠くからベンチに座って見つめる銀時さんと新八君が目に入った

なぜか顔全体に包帯を巻いている


「……いや〜スッカリなついちゃって微笑ましい限りだね、新八君」

「そーっスね。女の子にはやっぱり大きな犬が似合いますよ、銀さん」

「僕らにはなんでなつかないんだろうか、新八君」

「なんとか捨てようとしているのが野生のカンでわかるんですよ、銀さん」

「動物は捨てちゃだめですよ、銀時さんに新八君」

「うおっ?!って蘭?」

「蘭さん!!お久しぶりですね」


銀時さん達の後ろから声をかけるとかなり驚かれた


「ところでその怪我はどうなされたのですか?」

「なんか僕たちには懐かなくて噛まれるんだよね、新八君」

「そうなんですよ。だからこんな姿になってしまったんですよね、銀さん」

「まぁ…」


遠い目をしながら話す二人を聞いていると神楽ちゃんがこっちに気づき、手をぶんぶんと振っていた


「蘭姐!!いつから居たアルか?!」

「さっき来たところなの」


走ってきた神楽ちゃんは勢いよく私に抱き付いた

少しよろめいたがなんとか体勢をたてなおして神楽ちゃんの頭を撫でた


「あ、蘭姐に紹介するネ!
この子、定春っていうアル」

「ワン!」


神楽ちゃんについてきた大きな犬こと定春くんはお座りをしていた


「近くで見るともっと大きく見えるね
でもとっても可愛らしいわ」


そう言いながら定春くんに手を伸ばした


「あっオイ!そいつに近づいたら噛まれるぞ……」


定春くんに近づく私を止めようと銀時さんはベンチから立ち上がる

だが銀時さんと新八君に噛みつく定春くんは全然態度が違った

クゥ〜ンと甘い声を出しながら私に頭を撫でられているのだ


「あら、定春くんって大人しい子なんですね
とても銀時さん達に噛みつくなんて想像できないです」

「きっと定春も蘭姐のこと気に入ったからヨ!」

「うふふ、それは嬉しいわ」


それから神楽ちゃんは定春くんと走って行った

「なんでアイツと蘭にはなつくんだろう、新八君」

「蘭さんにはなついたみたいですけど神楽ちゃんにはなついていませんよ、銀さん」


今三人が見ている光景は神楽ちゃんに突進している定春くんを笑いながら片手で止めていた


「襲われてるけど神楽ちゃんがものともしてないんですよ、銀さん」

「なるほど。そーなのか、新八君」

「でも私はあんな風に元気よく走りまわったりじゃれたりできるなんて羨ましいです
それに元気があることはいい事ですし」


銀時は横目で蘭を見た

その時の蘭の表情は微笑んでいたがどこか寂しそうに見えた

銀時は黙ったままジッと見つめたが駆け寄ってきた神楽に視線を戻した


「楽しそーだな、オイ」

「ウン。私、動物好きネ
女の子はみんな、カワイイもの好きヨ
それに理由イラナイ」

「…アレ、カワイイか?」

「カワイイヨ!こんなに動物になつかれたの初めて」


その瞬間、こっちに突っ込んできた定春くんは神楽ちゃんを吹っ飛ばした


「神楽ちゃん、いい加減気づいたら?」


だが一向に気づかない神楽ちゃんは定春くんをけっ飛ばして話をつづけた


「私、昔ペット飼ってたことアル
定春一号」


定春一号とは前に神楽ちゃんが飼っていた兎のことであった


「ごっさ可愛かった定春一号
私もごっさ可愛がったネ
定春一号、外で飼ってたんだけどある日、どーしても一緒に寝たくて
親に内緒で抱いて眠ったネ
そしたら思いの他、寝苦しくて悪夢見たヨ
散々うなされて起きたら定春…
カッチコッチになってたアル」


ぐすっと目に涙を浮かべる神楽ちゃんに私はそっと神楽に抱き付いてよしよしと言いながら優しく頭を撫でた

神楽ちゃんも「蘭姐…」と呟き、私に寄り添った

そんな光景を銀時さんと新八君は見つめながら思った


((泣けばいいのか笑えばいいのかわかんないんだけど…))


「あれから私、動物に触れるの自ら禁じたネ
力のコントロール下手な私じゃ、みんな不幸にしてしまう」

「そんなことないよ神楽ちゃん
きっと定春一号も神楽ちゃんに可愛がられて嬉しかったはずよ」


神楽ちゃんは微笑む私にじわっとまた涙を浮かべた

私は定春くんの方に向いて頭をそっと撫でた


「それにこの定春くんも神楽ちゃんとならお似合いだわ
もしかしたら神様から捧げられたのかもしれない」

「確かに蘭姐の言う通りアル
この定春なら私でもつり合える気がするアル」


するとふと神楽ちゃんはポケットの中に手を突っ込んで探った


「あ、酢昆布きれてるの忘れてたネ
ちょっと買ってくるヨ
蘭姐、一緒に付いてきて欲しいアル」

「うん。わかった」

「定春のことヨロシクアル」

「オイ、ちょっとまっ…」


私と神楽ちゃんは立ち上がり、駄菓子屋へと歩き出した

それを銀時さんと新八君は引き留めようとしたが後ろからの視線に口が止まった
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ