黄金色に輝く‐現在篇‐

□第陸話
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気絶して倒れていた近藤さんを発見した次の日

屯所はいつもより隊士達の声で騒がしかった

それを私は耳に入れながらパンパンに膨れ上がっている近藤さんの頬を治療する


「ごめんな…蘭ちゃん
最近治療ばっかさせてしまって」

「お気になさらないでください
それより今日はとても賑やかですね
何かあったんでしょうか」


ぺたりと腫れた頬の上からテープがついたガーゼを貼る


「まったくしょうがない奴らだなァ
いつまでたっても元気だよ」


膨れ上がっている頬のせいで笑いにくいのにそれでもガハハと笑う

正直あまり顔の筋肉を使われるとせっかく貼ったガーゼが取れるのでハラハラした


「それじゃあ治療もしてくれたことだし市中見回りに行こうかな」


よいしょっと言いながら立ち上がる近藤さんに私も急いで立ち上がった


「近藤さん!まだ腫れがひどいので今日は休んでください」

「大丈夫!大丈夫!
これぐらいなんともないよ」


本当は兄上に部屋から出させるなと言われたのですが…

なんとか止めないと

会議が行われている部屋へと向かう近藤さんをなんとか休ませるようについて行くがやはり男の歩幅と近藤さんの性格には勝てず、たどり着いてしまった


「待ってください!近藤さん!」

「ウィース
おお、いつになく白熱した会議だな」


そう言いながら近藤さんが襖を開けると部屋の中ではなぜか兄上が退先輩に刀を向けていた


「よ〜し、じゃあみんな、今日も元気に市中見回りに行こうか」


近藤さんの怪我を見た隊長たちは固まり、近藤さんの呑気さに兄上はため息をついた









「なんですって?斬るんですか?!」

「あぁ斬る」


驚きながら聞く私に土方さんはサラリと物騒なことを応えながら電柱に張られた隊士達が書いた張り紙を破り取る

因みに今、私は兄上と総悟君とで見回りをしている


「侍の白髪の侍ですかィ」

「うちの面子ってのもあるがあれ以来、隊士どもが近藤さんの敵とるって殺気立ってる
でけー事になる前に俺で始末する」

「土方さんは二言目には「斬る」で困りまさァ
古来、暗殺で大事を成した人はいませんぜ」

「暗殺じゃねェ
堂々と行って斬ってくる」

「ですが兄上、もしかしたら他に良い方法があるかもしれませんよ」


実は誰が犯人なのかを知っている私は内心、焦っていた

決闘で近藤さんが負けたといっても流石に銀時さんが斬られるのは駄目だと思い、なんとか斬りさせるのを止めようと考えた

でも兄上は少し頑固なところがあるから私だけで止められるでしょうか…

なんとか総悟君にも止めるように言いたいですけど…あぁ!どうすれば…!

というか最近、止めれてない気がします…!

眉をハの字にしながら悩んでいるとそれを察したのか総悟君は持っているバケツを私に渡した


「そうでさァ。そこまでせんでも適当に白髪頭の侍を見繕って連れ帰りゃ
隊士達も納得しますぜ
これなんてどーです」


すると近くに居たホームレスのオジサンを連れてきた


「ホラ、ちゃんと木刀もちな」

「ジーさん、その木刀でそいつの頭をかち割ってくれ」

「パッと見、さえないですが眼鏡とったらホラ
武蔵じゃん」

「何その無駄なカッコよさ!!」

「わぁ、とても素敵ですね」


オジサンがかけていたビン底眼鏡を取ると目がとてもキリッとしていて無駄にカッコよかった

だがこの提案に兄上は駄目だと拒否し、手を振り合いながらオジサンと別れた


「本当に殺してしまうのですか?」

「白髪って情報しかこっちにはないってのに」

「近藤さんを負かすからにはタダ者じゃねェ
見ればすぐわかるさ」


白髪の侍の捜索を再開し、歩いていると上から声が聞こえた


「おーい、兄ちゃん危ないよ」

「!」

「兄上!」


上を見ると何本も纏められた鉄の棒が兄上の上に降りかかってくる

それを私はいち早く反応し、後ろから兄上の腰を掴んで引っ張った

だが鉄の棒に驚いていた兄上はいきなり後ろから引っ張られたことで倒れてしまい、後ろにいた私も一緒に倒れた

しかし私が兄上を引っ張ったおかげでガシャンと落ちた鉄の棒の下敷きにはならなかった


「蘭!大丈夫ですかィ?!」

「蘭…!すまん!」

「はい、私は大丈夫です」


ニコッと安心させるように笑う私に土方はホッとした

その時建物の屋根から男が梯子を伝って降りてきた


「あっ…危ねーだろーがァァ!!」

「だから危ねーッつたろ」

「もっとテンションあげて言えや!わかるか!!」

「うるせーな
他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」


少し不機嫌そうに呟く男は被っているヘルメットを取った

すると男の顔が見えた瞬間、兄上は大声を上げた


「てめーは…池田屋の時の…」

「あれ?銀時さん?」

「うおっ!蘭じゃん」


尻餅をついたことで隊服についた砂を払っていた私は兄上の大声にどうしたのかと顔をあげるとそこに銀時さんがいることに驚いた

銀時さんも私が居たことに気づき、顔を緩ませた

「この前、急に蘭ちゃんがどっか居ちゃったから銀さん、寂しかったぜ?」

「すみません。仕事がありましたので」

「それなら仕方ねぇな」


そんな二人の様子を兄上はジッと見つめた

それに気づいた銀時さんはいつもの死んだ魚のような目で兄上の方を見た


「そうか…そういやてめーも銀髪だったな」

「…えーと君、誰?
あ…もしかして大串君か?アララすっかり立派になっちゃって
なに?またあの金魚、デカくなってんの?」


銀時さんは違う人と勘違いしながら兄上の肩に手を置き、もう片方の手を自分の顎に持ってきて呟いた

その銀時さんの勘違いに兄上は唖然とするしかなかった


「あの、銀時さん
この人は大串君ではなく私の「オーーーイ!!銀さん早く!こっち頼むって!!」


私は人間違いだと言おうとしたが建物の屋根から聞こえた男の人の声で遮られた

その声を聞いた銀時さんめんどくさそうには返事をして梯子に足をかけた


「じゃ、蘭ちゃん、大串君
俺、仕事だから」


そう言って登って行ってしまった


「いっちゃいました…」

「そんでどーしやす、大串君」

「誰が大串君だ
あの野郎、わずか二、三話で人のこと忘れやがって
総悟、ちょっと刀貸せ」

「?」


総悟君は首を傾げた後に自分の腰にある刀を鞘ごと兄上に渡した

そしてそれを片手に持ちながら器用に兄上も梯子を上って行った


「兄上は何をなさるんでしょうか?」

「あれは多分一戦交えまさァ」

「えぇ?!じゃあ早く兄上を止めに行かないと!!」


だが総悟君に止められ違うところへと連れていかれた
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