華鬼‐終焉と希望の華‐

□序章
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男は帰宅すると、女の元へ急いだ。ふっと庭を見ると、出かける前まで咲いていた桜は影も形もなくなっていた。少し寂しく思いながら部屋の障子を開く。だが、違和感があった。いつも温かく迎えてくれるはずの女が布団にいないのだ。胸騒ぎを覚えた男は次々に部屋を見て回る。すると、どこからか血の匂いがしてきた。庭を見るが誰もいない。だが、匂いは桜の方からしてくる。不審に思いながら庭におりて桜の木に近づく。桜の木の裏に回ると、そこには女が目を閉じて座っていた。

男は安心したように笑うと女に近づき声をかける。しかし、女は目を覚まさない。男は血の匂いが女からしていることに気づいた。血の気が下がっていくのがわかった。

「…浅葱?どうした?」
頬に触れると氷のように冷たった。なぜ、こんなことになった?ほんの数時間前まで笑っていたのに…。すると、頭上から何かの気配がした。上を見ると若い男がこちらを見て笑っていた。

「見つけるのが少し遅かったみたいですね?もう少し早ければ最後のお別れぐらいできたでしょうに…」

その言葉を訊いた瞬間、男に殴りかかった。それをかるく避けると男は地に降りたそその瞬間を逃さす鋭い蹴りが放たれる。それも避けると若い男はクスクスと笑いながら楽しそうに話しはじめた。
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