華鬼‐終焉と希望の華‐

□序章
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寒い冬の夜、雪が舞い地面を白く染めていく。そんななか、季節はずれの薄紅色の華が舞いはじめた。見上げると、もう二度と咲くはずのない桜の木に満開に華が咲いていた。それは、何かを暗示するように咲き誇り雪とともに地に落ちる。その現象は、ひとりの花嫁が生まれた瞬間、起こった。まるで、何かに惑わされたかのように。そして、生まれた女児は・・・鬼の一族のなかで遠い昔に生まれなくなった―――女鬼であった。

最下層の鬼から生まれた花嫁。ほとんど鬼の力を持たないこの男は、花嫁との間にできた子供が本当に女児だとは思ってもみなかったのだ。男は驚きの表情を浮かべながら自分の花嫁である女を見た。

「・・・このことは、上には黙っていよう。そうしないと・・・この子は実験体として連れていかれてしまうかもしれない…もちろん、君もだ」

男の言葉に女は動揺しながら愛しい愛娘を抱きしめた。

「そんなこと…それでは、彼にも黙っているのですか?あなたが鬼だということも知らないのに?」

女が問うと男は黙ってしまう。しばらく悩んでから、娘に視線を移した。女が不安そうに男を見つめる。すると、意を決したように女を見る。

「…忠尚のところに、預けよう。やつの所なら安全だ」

その言葉に女は悲しみをおびた瞳で男を見ると娘に視線を落とした。そして、何かを決意したかのように男を見た。

「…わかりました。きっと、渡瀬さんたちが守ってくれますものね」
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