華鬼-舞い散る華の如く-
□16回目の誕生日
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男の視線に居心地が悪いのか神無はたじろぐ。
桜咲は警戒しながら神無に用がある旨を伝えた。
神無は男に視線を向けて無言で話を促す。
男は悲しそうに微笑むと神無に近づきこう言った。
「朝霧神無さん、あなたの鬼が…華鬼がお待ちです」
その言葉に神無はきょとんとすると小さな声で問いかけた。
「鬼の…使い?」
男は頷くと名を名乗った。
「俺の名前は士津麻光明や」
神無は何も言わずにただ、足元を見ていた。
「これから2人には鬼ヶ里に来てもらわないかんのやけど…」
その言葉に桜咲は形のいい眉をしかめると光明に質問する。
「その華鬼とやらの花嫁は神無なのよね?なら、なぜ私まで?」
確かに神無が連れていかれるのなら自動的について行くつもりだった。
だが、目の前の男は桜咲も共に連れていくと言ったのだ。
その質問に光明は申し訳なさそうに答えた。
「君もどうやら華鬼の花嫁みたいやからな。ここに置いていくわけにはいかんのじゃ。ついて来てくれるか?」
仕方無い。もとからついて行くつもりだったのだ。無言で頷くと光明は2人の背を押し未だに背を向けている早苗に声をかけた。
2人の娘が見知らぬ男に連れていかれるとゆうのに見向きもしない。
「すみませんがお母さん、娘さんたち連れて行きますわ」
そう言って扉を閉めて階段を下り黒塗りの車に乗り込んだ。