華鬼-舞い散る華の如く-
□16回目の誕生日
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少し早めに起きた桜咲はパジャマを脱ぎ洗濯機に落とすと髪をとかし制服に着替えて朝食の準備を始めた。
リビングに行くと酒の空き瓶が至る所に転がり熱で熟れてこもった匂いが鼻をついた。
少し眉をしかめると注意深く窓をあけ換気をした。
早苗の方を見るとこちらに背を向けたままピクリとも動かない。
いつもの事かと思い直しキッチンに立ち冷蔵庫から食材を取り出す。
御飯を炊いて味噌汁を作りながらおかずを作る。
すると、外から人の気配がした。
インターホンがなり若い男の声がする。
「あの、朝霧神無さん?」
どうやら神無に用があるらしい。
生憎、神無はまだ寝ている。
警戒しながら扉を開けると背の高い制服姿の男が立っていた。
細いフレームの丸メガネをした優しそうな男だ。
扉が開いた事に安堵したのか話しかけてきた。
「朝霧神無さん?よかった。まだ寝てるんやないかと思った 」
そう言いながら悲しそうに笑った。
桜咲は男を睨みながら訂正した。
「神無は私の双子の妹よ。あの子に何か?」
そう言った瞬間、目の前の男は目を見開きパクパクと口を動かしている。