生贄の花嫁U

□眠り姫は永遠に
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アヤトくんは、いつまでたっても目を覚まさない。

数ヵ月たっても。

数年たっても。

彼は、目を開けてはくれない。

会いたい。

もう一度、もう一度だけ会いたい。

なんでアヤトくんは目を覚ましてくれないのだろう。

ようやく気持ちが伝わったと思ったのに。

いつまでたっても、彼は起きない。

もしかして、もう彼は私に笑いかけてはくれないのだろうか?

もう、あの声を聞くことは出来ないのだろうか。

「ビッチちゃんも真面目だねぇ。最近ずっと起きてるでしょ?」

「ライトくん…。」

ライトくんはニコリと笑うと、急に首筋にキスをおとす。

「っ!?」

「ねぇビッチちゃん。一緒に愉しいこと、しようか?」

「や…やめて…っ!」

「そんなこといって…本当は悦んでるくせに。」

「ひぁ…っ!!」

悦んでない。

怖いだけ。

助けて。

アヤトくん…っ!

でも私の身体は久しぶりの吸血に火照り続ける。

息があがり、頭がクラクラする。

「裏切ってるっていう背徳感からなのかな?いつもより興奮してるね、んふ。」

「ちが…っ!やだっやめて!」

アヤトくんが眠ってしまってから吸血されることのなかった体の血が、全て吸いとられていくような感覚。

ライトくんは散々吸血すると、私の額にキスをおとし、部屋から出ていってしまった。

「アヤト…くん…。」

なんで、なんで?

どうして寝たままなの?

普段ならきっと私の事を罵って、お仕置きだ。なんて言って吸血してくるはずなのに。

アヤトくんは安らかに瞳を閉じたまま。

「ごめんなさい…アヤトくん。」

私はもう、堪えられないよ。

アヤトくんが恋しくて。
会えないのが辛すぎて。

アヤトくんのアイアンメイデンに沢山の花を敷き詰める。

血のように真っ赤な、宝石のような薔薇。

穢れを知らない、真珠のような白百合。

一人だけ入れるようなスペースを残し、花を敷き詰める。

敷き詰め終わると、私はベッドで安らかに眠るアヤトくんにキスをする。

「お休みなさい、アヤトくん。」

それはまるで普段の挨拶のように。
明日があるかのように。

私は笑うと、アヤトくんの髪を撫でた。

少しだけ固い髪質が愛しくてたまらない。

「夢のなかでは…アヤトくんに会えるかな?」

チチナシ。
そういって満面の笑顔をする貴方に。

アヤトくんとの沢山の思い出。
沢山の記憶。

それを胸に抱きながら、私は彼のアイアンメイデンの中に入る。

蓋を閉じたら、それでお仕舞い。

私は、きっと最後になる彼の顔を見る。

最期ぐらいは寝顔じゃなくて、彼の笑顔を見たかったな。なんて。

おもいながら蓋をゆっくりと閉じた。
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