生贄の花嫁U

□転んで。
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「うぅ…眠い…。」

最近、毎晩毎晩吸血され、力尽きて眠りにつくことが多かった。

そのせいか疲れは取れず、授業中でも眠くなってしまう始末。

「次は体育だよね。少しは眠気も覚めるかな…。」

ため息をつきながら、服を着替え、私は校庭へ向かった。

今日の授業は陸上。

カナヅチではあるものの、そこまで運動音痴というわけでもないし、いい気分転換にもなるので、体育はそんなに嫌いじゃない。

ピッピッという小気味良い笛の音と共に、走り始める。

次の瞬間。

「きゃ…っ!」

思いっきり転んでしまった。

しかも何も無いところで。

は、恥ずかしいっ!

それほど深くはなかったようだけれど、擦りむいてしまったところから血が滲んでいた。

「うわぁ…。」

転んで膝を擦りむくなんていつぶりだろう。

とりあえず先生に許可をもらって、保健室へと向かった。

「いったぁ…。」

泥のついたままの傷痕では治療できないので、水で洗い流す。

シクシクと痛む傷痕。

それほど痛くはないけれど、血はあまり止まってくれない。

「うーん…。仕方ない。絆創膏借りれないかな…。」

生憎先生は留守のようで、無断で借りてもいいのか悩んでしまう。

「おいチチナシ!」

「ひゃっ!?あ、アヤトくん!」

扉を乱暴に開けて中に入ってきたのはアヤトくん。

あれ?まだ授業中のはずなんだけど…。

「お前…怪我したな?」

「へ…?ってきゃあ!?」

膝をぐいっとあげられる。

わわわっ!

「な、なにして…っ!ん…っ!」

転んだところを舐められた。

「ちっ…チチナシ…水で流しやがったな…。」

「だ、だって砂まみれだったし…。」

傷口が汚いままだと色々危ないんです。

「だからってオレ様の居ないところで勝手に血、流してんじゃねぇよ…っ!」

「いっ…!痛いよ、やめてっ!?」

アヤトくんの少しだけざらついた舌が傷口を這う。

それが傷口を刺激して、ズキズキとした痛みへと変わる。

「お前の血はオレ様のもんなんだよ。勝手に血、流して許されるわけねぇだろ?」

オモチャを貰った子供のように愉しげに、磔にされた罪人を見つめるように冷ややかに。

アヤトくんは口角を上げると、傷口に噛みついた。

「――――――――――っ!!!!」

痛くて苦しくて、声にならない悲鳴をあげる。

今まで何度も吸われて来たけれど、それとは比べ物にならない痛み。

「痛いかよ?くく…。お仕置きだからなぁ?我慢しろよ、チチナシ。」

酷く強引で。
酷く独占欲が強い彼に。

いつの間に私は絡め取られてしまったのだろう?

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