生贄の花嫁U
□転んで。
1ページ/1ページ
「うぅ…眠い…。」
最近、毎晩毎晩吸血され、力尽きて眠りにつくことが多かった。
そのせいか疲れは取れず、授業中でも眠くなってしまう始末。
「次は体育だよね。少しは眠気も覚めるかな…。」
ため息をつきながら、服を着替え、私は校庭へ向かった。
今日の授業は陸上。
カナヅチではあるものの、そこまで運動音痴というわけでもないし、いい気分転換にもなるので、体育はそんなに嫌いじゃない。
ピッピッという小気味良い笛の音と共に、走り始める。
次の瞬間。
「きゃ…っ!」
思いっきり転んでしまった。
しかも何も無いところで。
は、恥ずかしいっ!
それほど深くはなかったようだけれど、擦りむいてしまったところから血が滲んでいた。
「うわぁ…。」
転んで膝を擦りむくなんていつぶりだろう。
とりあえず先生に許可をもらって、保健室へと向かった。
「いったぁ…。」
泥のついたままの傷痕では治療できないので、水で洗い流す。
シクシクと痛む傷痕。
それほど痛くはないけれど、血はあまり止まってくれない。
「うーん…。仕方ない。絆創膏借りれないかな…。」
生憎先生は留守のようで、無断で借りてもいいのか悩んでしまう。
「おいチチナシ!」
「ひゃっ!?あ、アヤトくん!」
扉を乱暴に開けて中に入ってきたのはアヤトくん。
あれ?まだ授業中のはずなんだけど…。
「お前…怪我したな?」
「へ…?ってきゃあ!?」
膝をぐいっとあげられる。
わわわっ!
「な、なにして…っ!ん…っ!」
転んだところを舐められた。
「ちっ…チチナシ…水で流しやがったな…。」
「だ、だって砂まみれだったし…。」
傷口が汚いままだと色々危ないんです。
「だからってオレ様の居ないところで勝手に血、流してんじゃねぇよ…っ!」
「いっ…!痛いよ、やめてっ!?」
アヤトくんの少しだけざらついた舌が傷口を這う。
それが傷口を刺激して、ズキズキとした痛みへと変わる。
「お前の血はオレ様のもんなんだよ。勝手に血、流して許されるわけねぇだろ?」
オモチャを貰った子供のように愉しげに、磔にされた罪人を見つめるように冷ややかに。
アヤトくんは口角を上げると、傷口に噛みついた。
「――――――――――っ!!!!」
痛くて苦しくて、声にならない悲鳴をあげる。
今まで何度も吸われて来たけれど、それとは比べ物にならない痛み。
「痛いかよ?くく…。お仕置きだからなぁ?我慢しろよ、チチナシ。」
酷く強引で。
酷く独占欲が強い彼に。
いつの間に私は絡め取られてしまったのだろう?