生贄の花嫁U

□汚れていく水
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「ふう…。」

一人っきりになれて、落ち着ける場所。

私にとってそこは自分の部屋か、バスルームしかない。

「やっぱり落ち着くなぁ…。」

温かいお湯に浸かっていると、それだけで疲れが癒されていく気がする。

唯一の問題といえば、体に残る新しい傷跡がヒリヒリと痛むくらい。

しかしそんな痛みはこの気持ちよさに比べれば我慢できることなのだ。

「少しぐらい長風呂しても…いいよね?」

ゆっくり体の力を抜くと、お湯が染み込んでくるようで、気持ちがいい。

お風呂…最高…。

「ビッチちゃーんっ!」

「ひゃぁあっ!?」

油断しきっていた。

突然開いたドアから入ってきたのは、ライトくん。

「あれぇ?水着?」

「な、なんでそんな残念そうに言うの…っ!」

そう。私も学習しました。

こんな風にいつ誰が入ってくるかも分からない状況で、全部脱ぐのはあまりにも危険。

少し抵抗もあったけれど、今はお風呂に入るときは基本水着着用することにしました。

「僕としてはこうやって急に入られて恥じらいで顔を真っ赤にするビッチちゃんが見たかったのにぃ…。」

「し、知らないよ!そんなこと!」

というかやっぱり狙ってたんですね。
毎回毎回いい時間帯にお風呂に乱入してくると思ったら…。

「って、おいライトっ!てめぇ何チチナシに手ぇ出してんだ!」

「あ、アヤトくんっ!?」

アヤトくんまで乱入!?

「あれ?アヤトくんも覗いてたの?」

「チチナシは俺様のもんだぜ?覗いてて何が悪いんだよ。」

「ええっ!?」

いやいやいや、覗きは犯罪なんだよ、アヤトくん…。

「えー。ビッチちゃんは僕のだよ?でも、アヤトくんのモノであるビッチちゃんを奪う…っていうのも悪くないかもね。んふ♪」

「ちょ、ライトくん…。」

色々と問題点があると思いますが…?

「うるさいですね。ギャーギャー騒がないでくださいよ。」

「あれ?カナトくん。」

「っ!?」

カナトくんも!?

「二人でよってたかってユイさんに何してるんですか?」

「何…っていうか、覗き?」

「ライトくん!?平然と犯罪してること公言してるよ!?」

「人間の法律とか関係ねぇんだよ。」

「そんな極論を…。」

ダメだ…。
流石ヴァンパイア。

考え方が追い付かない…。

「てかチチナシ。てめぇ、なんで水着なんてしてんだよ。」

「へ?」

「でしょー!?楽しみが半減しちゃうよねー?」

「君の貧相な体になんて興味ありませんけど…隠すほどのものなんですか?」

「ックク。ほんとチチナシのクセにチチ隠すとか意味ねぇだろ。」

「そうそう!ね、ビッチちゃん。脱いじゃいなよ。んふ♪」

「嫌ですっ!」

これは観念してお風呂から出るしかない…か。

「それじゃあ私部屋に戻るから…。」

「あ?何言ってんだよ。」

「ひゃっ!」

腕を捕まれた。

そして、唐突に首筋に牙をたてられた。

プツリという皮膚が裂ける音と、痺れるような痛み。

「アヤト…ズルいですよ。」

「っ…!」

同じようにカナトくんにも捕まれ、足から血を吸われる。

「んふ、二人だけで楽しむなんて…。僕もいれてよ。」

「い…っ!」

ライトくんには脇腹に噛みつかれる。

「や、やめて…っ!」

一度に三人から吸われたら…貧血になっちゃうよ…!

離してもらおうともがくけれど、私が力で勝てるわけがない。

「はっ。やめるわけねぇだろ。んん…っ。」

「君は本当にバカなんですね。これ以上暴れると…噛み殺しますよ?」

「んふ。一度に三人からって…どんな気分?ビッチちゃん。」

「う…。くぅ…っ!」

全身を噛まれ、血を吸われ、頭がぼんやりとする。

ポタリと、流れ出た血がバスタブを汚す。

そうして汚れていく真っ赤な吸血の痕は。

一体いつになったら綺麗になるの?

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