少女幻想

□少女幻想――prologue
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薄暗がりの中、男は自らの左腕に針を突き立てる。

シリンジの中身を勢いよく押し入れれば、直ぐ様言い様のない多幸感に襲われた。

身体は弛緩し、思考は麻痺する。しかし、性交とは比べ物にならぬ程の快楽に溺れても、心は何処かで醒めていた。

刹那的な享楽などいらない。
自分が真に欲するものは、こんなものではない。

「っ…はぁ……__子…」

まだ足りない。
これではまだ至れない。

もっとと、男はサイドテーブルに置かれた小袋から白い結晶を取り出し、注射器にそれを移しかえ水で溶かす。

男の腕は針跡の赤黒い痣で疾うに埋め尽くされている。

自堕落なこの行為で得られる幻想はほんの一時。
それでも、かつての夢を取り戻せるならば、自滅的なこの行為を幾百なりとも続けるつもりだ。

既に、三本目。
限界に近い量を打ち込み、脳髄が融解したかのような錯覚を起こす。

夢か現か。その時、虚ろな男の目の前に漸く"望み"が現れた。

「……ぁ…嗚呼…」

男の身体は歓喜にうち震える。

震える指先を伸ばし、男は目の前の愛しき『理想』を引き寄せて、きつく抱き締めた。
もう二度と、この手から取り零さぬように。








――少女幻想





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