ヒロアカ

□夏休み
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ついにこの日がやって来た。
常夏の世界から長年過ごした神の地へ。神聖なるその場所に心癒されながら、荷物片手に屋敷の門を潜る。そうして相も変わらず広々とした屋敷に踏み込めば、「おかえりなさーい!」と可愛らしい声がボクたちのことを出迎えた。

「記録くん!」

「久しぶりー!お仕事順調?不調ない?」

「大丈夫大丈夫。それよりリレイヌは?」

「執務室!仕事中だよ!」

「相変わらず仕事漬けか」

彼女はもう少し、休むということを覚えた方がいいと思う。
ひそりと考え、背後を振り返る。ガチガチに固まったトガと分倍河原に苦笑を浮かべつつ、ボクは「ついておいで」と歩き出した。
向かうは執務室。リレイヌの元だ。

「今からボクたちの主に会わせるから、粗相のないようにね。まあ大抵の事は許してくれる寛大な人だけど……」

「下手な真似したらぶっ飛ばすから」

「落ち着け」

くだらない会話をしていたら、執務室前に到着。軽く息を吐いた後にコンコンッと部屋の扉をノックすれば、「入れ」と短い声。

「失礼します」

扉を開けた。

「主様。ご無沙汰しております。ミトス、シンク、リオン。ただいま帰還致しました」

「怪我がないようでなによりだ。それはそうと、後ろの者は?」

「はっ。右から分倍河原仁とトガヒミコです。二人は今現在、ボクたちの協力者として共に過ごしています」

「なるほど。リレイヌ・セラフィーユだ。よろしく」

柔らかに笑んだ彼女に、二人が呆ける。シンクが「なにボーッと突っ立ってんの?」と低い声を発せば、彼らは慌てて名乗り、挨拶。深々と頭を下げた。

「ふふっ。礼儀のなった子達だね」

「主様寛大すぎない?」

「これくらいで怒る方がどうかしてるよ。それより、仕事の方は順調かい?」

「ぼちぼちだな」

「そうか。まあなにかと疲れたろう。暫くはゆっくり休むといい」

「「「はっ」」」

頭を下げ、シンクたちを見る。二人はそれで言いたいことを察したらしい。「失礼します」と、分倍河原とトガを連れて出ていった。残された部屋の中、ボクは一人彼女を見つめる。

「……オールフォーワンのことかい?」

こくり。
頷けば、彼女は困ったように微笑んだ。

「敵側に協力者を作った際に私のことを話されたみたいでね。いろいろと探られ捕まった。我ながら情けない話しさ」

「だから現在敵に協力者はいないの?」

「そうだね。どこで私の居場所を突き止めてくるかわからないから、一応警戒して」

「ヒーロー側から漏れる可能性は?」

「あるよ。まあだが、此処を知るのはホークスくらいのものだ。あの子は口が固い。大丈夫さ」

「大丈夫なら、いいんだけど……」

されど不安だと彼女を見遣れば、「私のことはいいから、仕事に専念しなさい」と告げられる。なのでボクは返した。「オールフォーワンは討つ」と。

「例え過去の事でも、リレイヌに手を出した時点でボクたちは奴を許せない。私怨と言われようが奴は倒す。絶対に」

「君たちの力量なら大丈夫だとは思うが、そこら辺の石ころにわざわざ反応する必要もないと思うがなぁ」

「あるの」

「はいはい。好きにしなさい」

投げやりに彼女は言った。

「ところで、問題などは出てきてないかい?生活する上での事柄や、今後の過ごし方など」

「今のところないけど……あ、そうだ。高校はどうすればいいの?あと二年は余裕あるけど、今のうちに考えといた方がいいって緑谷に言われてさ」

「緑谷?」

「あー、友達」

なるほど、と頷くリレイヌ。彼女は少し考える素振りを見せた後、「根津の所に行けばいいんじゃないかい?」と言葉を返した。
根津の所といえば……。

「雄英?」

「そうそう。ヒーローを目指す者にとっては最高峰である高校」

「ボクたち別にヒーローは目指してないけど……」

「なら普通科とかあるからそっちに行けばいい。それに、根津の近くにいた方が彼も何かと手を回せると思うしな。私たちも会いに行きやすい」

「そっか。ならそうする」

「うん。そうしてくれ」

ほら、久々の帰還なんだ。皆に挨拶を。

そう言われ、頷き、扉へ。ふと足を止め、不思議そうな彼女を振り返る。

「ただいま、リレイヌ」

一拍の間の後、優しいおかえりが降ってきた。
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