アビス2

□エピローグ
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今日は朝から忙しかった。
早めの朝食をとり、式典での動きを再確認。正装に着替え、いろいろな人と顔を合わせて挨拶し、馬車に乗って白銀の教会へ。

真っ白な大理石と巨大なステンドガラス。それらにぐるりと周囲を囲まれた教会は、まるで雪で作ったかまくらの中だと思った。冷たくもあたたかく、不思議な感覚のする空間。吹き抜けとなった天井にいくつも浮かぶ光の礫が、さらにその妄想に歯車をかけていく。

「選定者よ、ここへ」

呼ばれ、ボクたちは禿げた男の前へ。片膝を折り、手のひらを合わせて祈るように頭を下げた。そんなボクたちの頭の上には白い布が被せられ、それはボクたちの顔を覆い隠す。
人の気配がしてきた。式典が始まる。
ドキドキとうるさい心臓を無視するように、ボクは手のひらを強く握った。


◇◇◇◇◇◇


「──お疲れ様、3人とも」

式が終わり、街を回り、遠くから手を振ってくれるジーニアスたちに手を振り返しながら顔見せを終えて教会に戻れば、そこにはリレイヌたちの姿があった。その目の前には赤い翼を携えた男がおり、彼はボクたちに一礼。リレイヌに何かを告げてから再び頭を下げ、この場から出ていく。

「……今のは?」

「とある世界の協力者。いろいろ調べてもらっててね。その報告をしてもらってたところだ」

「へー」

こくりと頷き、「僕たちちゃんとやれた?」と問うシンクに、「綺麗だったよ」と彼女は笑う。その褒め言葉になんだか照れくさくなっていれば、「良くも悪くもこっからが始まりだ」とリオルが告げる。

「お前たちは管理者同様、世界にその名を馳せることになる。選定者としての仕事も舞い込んでくるから、そのつもりでな」

「「「はい」」」

「じゃ、今日はもう自由行動。友達来てんだろ? 帰る前に遊んでこい」

告げたリオルに頷き、正装から普段着に衣服を替えてもらってから、3人で教会を駆け出す。そんなボクたちは知らない。

「しかし、厄介なことになってきたな」

彼女たちが、難しい顔をしていたことを……。
 

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