アビス2
□友人
1ページ/4ページ
それからの日々は忙しかった。式典での立ち居振る舞いや衣装選び。またレヴェイユへの訪問など、いろいろした。もちろん、教育を施されながら……。
神族になってからというもの、以前より遥かに動けるようになった。魔法も魔導も底が見えないほど扱えて、動物たちも従順だ。なるほど、これが神としての力か、なんて思いながら、師匠にぶっ飛ばされて屋敷の壁へ。凄まじい音をたててひっくり返ったボクの隣、同じくぶっ飛ばされたリオンが座り込む。
「……確実にレベルアップしてるはずなのに相手の底が見えないのどういうことなんだろうね」
「知るか」
まだまだだね、と笑う師匠に二人で嘆息。と、「ミトス!!!」と聞き覚えのある声がして、リオンと共にそちらを見れば、そこにはあわあわとした顔のジーニアス。後ろにはロイドたちの姿もあり、ボクは驚きに目を見開きながらすぐさま立ち上がった。
「みんな、久しぶり。何してるの?」
「そっちこそ何してるの!? っていうか、あれ? なんか……雰囲気が……」
「神気のせいじゃない?」
「神気?」
首を傾げる彼らに説明、しようとしたところで「おーい! リオンー! ミトスー!」と新たな声。見ればスタンたちの姿がある。
「お前たち、なにしてるんだ?」
「式典? っていうのに呼ばれて、ジョニーさんがここまで連れてきてくれたんだ! っていうかこの屋敷デカイな!」
「まあ仮にも最高神の屋敷だからな……というか、なぜジョニーがお前たちを……」
「鍵でも持ってるんじゃないの?」
「! イオン!」
どこからとも無く現れたイオンは、その後ろに六神将やら情報部やらを引き連れていた。レインが「ミトス! リオン! 久しぶりです!」と笑っている。
「久しぶり、レイン。元気してた?」
「それなりに。でも、皆さんがいなくなってとても寂しいです」
「ミトスの知り合いか?」
「渡った世界でいろいろあってね。みんな知り合いだよ」
順に紹介していけば、そこで空から「オルラッドー!」と声。顔をあげれば不可思議な生物がおり、そこから小柄な少年が飛び降りてくる。
「ジル!」
師匠が笑った。ジルって確か……、と少年を見ていれば、こちらに気づいた彼は沈黙。「うおおおお!!?? テイルズ勢!!??」と謎の言葉を上げて師匠にしがみつく。
「……テイルズ勢ってなに?」
「僕に聞くな」
リオンも知らないようだった。
「ジル、ミトスたちを知ってるのか?」
「知ってるもなにも俺の故郷じゃ有名な方々よ!!?? え!!?? もしかして選定者ってここにいる……」
「ミトスとリオン、あとシンクがそうだ」
「うっひゃぁああ!!?? 神ってすげえ!!?? あ、俺、ジル・デラニアスですどうぞよろしく」
忙しい人だと思いつつ挨拶。謎の生き物からおりてくる他の面々を見届け、師匠を見る。
「師匠。この人たちって師匠の仲間の?」
「ああ、悪の一行だ」
「師匠? コイツが? おたくら若いのに自殺志願者かなんかなわけ?」
「黙れ」
黒ずくめの男を睨む師匠に、うわ、ほんとに毛嫌いしてる人いたんだ、と驚いた。
「ミトスー。リオンー」
と、再び上から声。顔をあげれば屋敷の窓よりこちらを見下ろすシンクがいる。イーズ様との修行は終わったようだ。若干ボロボロになっている。
「客人を中へってさ。いつまでも外にいさせるのはいけないだろうって。ホテルは予約しとくから夜までは屋敷で過ごしても構わないみたい。案内してやれって。終わったら自由にしていいらしいよ」
「わかった。シンクは?」
「僕は今から師匠と買い出し」
「ついて行きましょうか?」
「客人に荷物持ちさせろっての? バカ言わないでよ僕が主様から怒られる」
レインがしょげた。シンクはふんっ、と鼻を鳴らして「そういうわけだからこっちはよろしく」と引っ込んだ。「待ってよ師匠!」と声が聞こえたことによりイーズ様を追いかけているのがわかる。
「……とりあえず言われた通りにしようか。着いてきなよ、案内するから」
言って、歩き出すボクたちを、ぞろぞろと皆は追ってきた。