デスティニー

□密かな決定
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セインガルドに戻ってきてからは、大変だった。王がリレイヌの無事を全身全霊をもって喜び、途中離脱したことを伝えれば「寧ろその方が心臓には優しい!!!」と叫ばれる。そうして流れのままに王とのプチ会議が開かれ、ヒューゴのことやオベロン社のことなど、いろいろと相談された。

ボクたちが旅立った後、こちらもなかなかに大変だったようだ。なぜ自分が王城に呼ばれなくなったのかを問うてくるヒューゴをあらゆる理由をつけてのらりくらりと交わしていたそうだが、そろそろネタが尽きて困っていたとの事。そりゃいきなりそうなれば誰でも疑問抱くわと叱られた王は、「すみません」と小さくなっていた。

ヒューゴのことは、一先ずは今まで通りにするということで、ボクたちは本題に入る。
アクアヴェイルに蔓延っていた狂信者のこと。ティベリウスが恐らく不死の妙薬を狙っていたことなどを伝えれば、王は青い顔に。「厳重な警備をつけますので暫くは城で過ごしてくださいっ!!!」と泣きつかれた。そして「落ち着け」と叩かれていた。哀れ。
王に詳しく聞いても、こっちにはなんの情報も入ってないからわからない、とのことだ。使えない。

「んー、協力者増やすべきか……。他国にも少々手を回した方がいいかもしれんが、ろくな奴いないからなぁ……」

考えるリレイヌは、なんだか疲れているようだった。

とりあえず、後のことはリオンが帰ってきてから話そうと、ボクたちは半ば押し込まれる形で城内にある部屋にて日々を過ごすこととなった。
リレイヌは「寝る」と言ってから宣言通り寝たきりに。様子を見に来たドライデンという将軍が安堵していたので理由を伺えば、彼女のこれは文字通り、休息なのだと彼は言う。永遠の命を有する彼女は起きていれば傷つき弱る。そのかわり、長い眠りにつけばつくほど、心身ともに回復するそうだ。これはイヴを抑えるためにも必要なことらしい。
だからオールドラントでも寝てたんだ、と納得し、ボクは寝入る彼女の頭をそっと撫でた。

「ミトス様! シンク様! リオン様方が戻られました!!!」

「うるさいよ。リレイヌが睡眠中だってことわかってる?」

「申し訳ありませんっ!!!」

数日後、彼らがファンダリアより帰還した。神の眼はきちんと持って帰ったようで、とりあえず序章は終わりだなと息を吐く。
リレイヌのことを知っているということで、部屋を警備する老兵がわたわたするのをよそ、彼を脅すシンクを止めて前へ。「ありがとう。リオンたちは謁見の間に?」と問えば、彼はこくこくと頷く。

「そっか。わかった。仕事に戻っていいよ。報告ありがとう」

「はっ!」

敬礼した兵が部屋の前で佇む。それを見届け扉を閉めれば、「帰ってきたのかい?」と声。振り返れば、ベッドにて上半身を起こす彼女がそこにいる。

「ごめん。起こしちゃった?」

「いや、構わない。どれくらい寝てた?」

「4、5日ってところかな。疲れは取れた? 大丈夫?」

「問題ない。それより、お腹すいたな……彼らはどうせこれから会議だろうし、終わるまで街にでも繰り出そうか。2人はなにか食べたかい?」

シンクと2人、首を横に振った。それに、リレイヌは「そう」と頷くと、ベッドを降りる。

「申し訳ないが、少し付き合ってもらえるかな、2人とも?」

「「喜んで」」

恭しく一礼すれば、彼女は可笑しそうに笑っていた。
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