NARUTO

□後悔のないように
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ごろんと転がった高い道の端、遠くを見るように空を見上げていた私を見下ろすように、「何してるのさ」とシンクが問いかけてきた。そんな彼に少し間をあけ「休憩」と返せば、「ふうん?」と傍らに座られる。

「もしかしなくてもお疲れ?」

「どーだろ。調べた情報の量が多くてちょっと頭パンクしそうなだけだから……」

「世界自体を見るって、そんなに大変なんだ?」

「そうだなぁ。一歩間違えば情報量の多さに狂うかもな」

見てみる?、なんて言えばやめとく、と彼は言った。それにそう、なんて返したところで、「リレイヌぅうううううっ!!!!」と声。もぞもぞ動いて高所から下を見下ろせば、長門がこちらを見上げていることに気づく。

「長門? どうし……」

言いかけた私は、彼の目が変化していることに気がついた。シンクが不思議そうに「イメチェン?」と呟いている。

「りりり、リレイヌっ! シンクっ! どうしようっ! 俺の目が突然変な感じにっ! し、死ぬのかっ!? 俺は死ぬのかっ!!??」

「「落ち着け」」

思わずと告げ、下へ。シンクと共に長門の前に赴き、その顔を両手で挟んでじっと瞳を見つめた。長門は忙しなく視線を動かしている。

「……輪廻眼」

「へ?」

「確かそう呼ばれる瞳術があったはずだ。写輪眼や白眼といった瞳術と一緒に三大瞳術と呼ばれていた気がする」

「写輪眼……って、確かイタチが持ってたよね」

「ああ」

頷いたところで、「何してるんですか」とイーズが現れた。恐らく修行中だったのだろう。傍らには白と君麻呂を連れている。

「イーズ。丁度いいところに……」

私は彼に長門の目の変化を説明。輪廻眼について至急調べてくれと頼めば、彼は一礼してその場を去った。白と君麻呂が「大丈夫?」と長門に寄っている。

「白……君麻呂……お前たちを置いていくことをどうか許して欲しい……っ」

「そんなっ! 長門さんっ!」

「長門死ぬのか?」

「いや死なないから。長門も遊んでないでさぁ」

呆れた風なシンクに笑い、「とりあえず家に行こう」と皆を促す。道中、薬草採取中だったサソリがリアミカを頭に乗せたまま怪訝そうな顔でこちらを見ていたが、「気にしないで」と告げれば、彼は頷いて作業に戻っていた。


◇◇◇◇◇◇


「──主様。輪廻眼についての調査結果が出ました」

「早かったな」

「調査班に依頼しましたので」

ああなるほど、と私は報告書を受け取った。それに目を通せば、傍に座る長門がそわそわとこちらを見る。

輪廻眼とは、血継限界のひとつ。三大瞳術と呼ばれる特殊な眼球の1つで、写輪眼、白眼、輪廻眼と確認されている。その中でも輪廻眼は、最も崇高にして最強の瞳術とされ写輪眼が最終的に辿り着く究極系。模様は波紋のようで、色は薄い紫色をしている。……というとこまでは私も知っているのだが……。

「……ふむ。開眼すると五大性質全て扱える他、六道の術という特殊能力を得るようだね」

「六道の術?」

「地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道・外道」

「7つだね」

「六道なのにな」

なんて会話をしていれば、ミトスたちが帰ってきた。「ただいまぁー」とのんびり告げる彼らは、長門の目を見て一時停止。「イメチェン?」と首をかしげる。

「ちがうよ。輪廻眼が開眼したらしい。極めれば強い瞳術なんだと」

「へー、凄いじゃん長門」

「その目見えるのか?」

「あ、ああ、見える。視界は良好だ。しかし、いきなり六道の術と言われても何をすればいいのか全くわからないんだが……」

ポソポソ喋る長門に「まあゆっくり調べていこう」と告げ、紅茶を飲む。爽やかなレモンティーの香りに癒されながら、私はホッと息を吐き出した。


◇◇◇◇◇◇





からんころん
からんころん

不可思議な音が鳴る。

すっかり暗くなった町の中、家から歩み出た私は、水生生物漂う空を見上げて目を細めた。そして、ふらふらとさ迷うように塔の方へ。黙々と歩き、塔の中に入れば、なぜか光差し込む大木の下、赤い髪の女性を見つけた。こちらに背を向け振り返りもしない彼女に、私は口を開ける。

「……もう誰も、傷つけたくない」

私が何かを言う前に告げられた一言。自然と口を閉ざした私は、ただ黙って、目の前の彼女を見つめる。

「イヴは、この世界を飲もうとしてる……大きな世界を壊せば、他の世界にも影響が及ぶ……」

「……」

「救いたかった。一人でも、多くの者を……」

懺悔するようにこぼした彼女は、そこでようやっとこちらを振り返る。僅かに吹く風に髪を、纏う青の着物を揺らすその姿は、どこまでいっても美しい。

「……苦しむのは、我々だけで十分だ」

涙を一筋流した彼女に、私は静かに目を伏せた。
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