幽遊白書

□明確なる拒絶
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「――さ、上がって。寛いでちょうだいね」

「……お邪魔します」

結局、あんな形相の学年一位に止められてしまっては断れないというもの。たまたま今後の予定もなかったため、私は南野家にお邪魔させていただくことになった。
なざかルンルン気分な女性――志保利さんに内心疑問を抱きつつ、申し訳なさそうな南野さんを横に家の中へ。清潔感、そして生活感溢れるそこに踏み込み、さっさと目的を果たそうとキッチンの場所を聞く。

「こっちよ」

案内しようとした志保利さんを、南野さんは慌てて止めた。

「いいよ母さん!俺が案内するから!」

「でも秀一……」

「いいから座ってて!セラフィーユさん、ついてきて!」

母に先を越されまいと、さっさと歩き出す南野さんの後を追いかける。
キッチンはやはりというかなんというか、とても綺麗な状態で保持されていた。志保利さんは綺麗好きな方のようだ。好感が持てる。
彼女が買ってきた食材を物色しながら、さてどうしたものかと考える。材料的にオムライスでも作ろうとしていたのだろうか?野菜があったことにちょっとだけ安心する。

「すみません。いきなりこんな……」

「乗り掛かった船です。構いませんよ」

背後で謝罪をこぼす南野さんに、振り返ることなく告げる。

「それより、フライパンってどこですか?あとボール……」

「ああ、それはこっちに……」

南野さんに道具の場所を教えてもらい、必要なものだけ準備し、エプロンをつけて調理を開始する。

まず作るのはサラダだ。各野菜を水洗いし、均等に切り分けボールの中へ。即席で作ったドレッシングと合わせ、ラップをしてそのまま冷蔵庫に寝かせる。サラダは以上。オムライスに取り掛かる。
市販のチキンを細かく切り分け、玉ねぎはみじん切りに。それらを炒め合わせ、粗熱を取っておく。その間にお米とソースの下拵えをして、一応お皿を準備しておく。

テキパキとした動きに呆気にとられたのか、隣で私の手元を覗き込む南野さんは驚いている様子だ。正直言って邪魔くさい。だが、そんなことを言うのは無粋というものだ。我慢して作業を続ける。
ものの数十分で完成した夕ご飯。お皿にきちんと盛り付けられたそれらを前、流れのままに席へと座らされた私は心中で嘆く。早く帰りたい。しかし食べなければ帰れない。辛いところだ。

「――まあ!美味しい!」

オムライスを食べた志保利さんが、嬉々として言う。

「リレイヌちゃん、料理上手なのね!私、こんなに美味しいオムライス初めて食べたわ!」

「大袈裟ですよ」

「そんなことないわよ!ね、秀一?」

いきなり振られた南野さんは、慌てて志保利さんに頷き笑う。君、まだ食べてないくせに……。
まあいいかと、オムライスを食した。出来は上々だ。我ながら良い味付けである。
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