幽遊白書

□サボり魔は天才
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――必ず、俺が必ず見つけ出す。

バケツをひっくり返したような土砂降りの雨の日。彼は動けぬ私にそう言った。冷たいであろう私の片手を取り、絶対に、と告げる彼は、どうしてか辛そうだった。
だから手を伸ばした。空いたもう片手で、私は彼の頬に触れた。

――どうして……?

そこまで、君が思い詰めるのか。
わからないと言えば、彼は静かに、こう言った。

――それが俺の、君に対する償いだ。



******



「りっれいっぬさーん!!」

無邪気な声に、ハッとして顔をあげた。いけないいけない。一度息を吐き出し、振り返る。

「おはようございます、和真さん」

人間界に来て数年。なかなか探し物を発見できぬ私は、こそこそ隠れて過ごすことをやめ、今はとあるアパートにて過ごしていた。得意の情報操作を用いて個人情報やらなんやらを弄っているため、霊界側も私に対しなんら疑いを持つことはないであろう。

因みに今は学校へと登校中である。設定的に16かそこらなため高校に通っている。盟王学園高校とかいう名前の学校だ。
なぜ高校なのか。そう問われたら童顔だからとしか言えない。辛いところである。もうオババな歳なのに制服なんて……。

「どーしたんすか?なんか元気ないっすね」

和真さんがいう。私は「そうですか?」と微笑んだ。
桑原和真。そんな名前の彼は、私の住むアパートに暮らす隣人である。姉の静流さんと幾度か交流があるため、度々家にお邪魔させてもらっていたりするのでわりと仲が良かったりする。ここだけの話だが。
和真さんはコクコクと頷き、眉尻を少しだけ下げる。

「なんか悩んでるように思いますね。悩み事でしたら、この桑原和真がなんでも聞きますのでいつでも言ってくださいね!」

「ふふっ、ありがとうございます。和真さんの元気な姿を見ると、私も元気になりますよ」

クスクスと微笑めば、彼は顔を赤くして頭をかいた。照れているのか。面白い子だ。もう一度クスクスと笑う。

「それじゃあ、私はここで。学校頑張ってくださいね」

「は、はいっ!リレイヌさんも!」

「ええ、ありがとうございます」

駅にて彼と別れ、私は人の多い改札を抜けて電車の中へ。空いている席に腰掛け、持参した本を開く。

「……仙水、忍」

思い出すのは雨の中、辛そうだった彼。私の変わりに探し物を見つけると言った彼の名を、ぽつりと呟く。それはきっと、誰にも届くことのない、本当に小さな呟き。

――彼、元気かな……。

なんの音沙汰もない彼の身を密かに案じながら、瞳を伏せる。電車はゆっくりと、動きだした。
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