シンフォニア

□約束と仲間
1ページ/4ページ




翌日、早朝。
人目を忍んで行動するべく、朝早くに豪邸を後にした私たち。途中、精霊研究所なるものに寄ってからグランテセアラブリッジ近辺まで赴くと、その傍らにあった立ち入り禁止区域に忍び込んだ(枷はロイドさんが外した)。どうやらここから出発し、こっそりと海を渡るらしい。

「……橋が見えるわね」

「……ホントだ。あの飾りみたいなのはエクスフィア?」

言いながら、橋を見るリフィルさんとコレットさん。二人の口から出た知らない単語に反応し、私も橋を仰ぎ見る。

改めて見据えた橋には、数えきれない数の何かが取り付けられていた。恐らくあれがエクスフィアなるものなのだろう。見た目ちょっと気持ち悪く見えてしまうのは、集合体に見えてしまうからに違いない。

「……エクスフィア」

小さく呟く。ロイドさんから「知らないのか?」と問われてしまった。

「はい。お恥ずかしながら……なにか特殊なアイテムなんですか?」

「アイテムっていうか……あれは、人の命なんだ」

「命?」

「ああ」と頷くロイドさん。とりあえずなるほどと頷く私。

「……この跳ね橋の制御の為には、三千個分のエクスフィアが必要なんだよ」

ゼロスさんにそう言われて、妙に合点がいった。
大陸と大陸を繋ぐ跳ね橋を制御するには、それ相応の力が必要だ。命、もといエクスフィアがその力の源ならば、納得ができるというもの。恐らくエクスフィアは、力を増幅させる効果を持っているに違いない。

「……ちょっと、気持ち悪いね」

「確かにグロテスクだな。エクスフィアの成り立ちを知っちまうと。そんな風にいうのもどうかと思うけどよ」

ゼロスさんがため息交じりに呟くと、コレットさんも小さく頷いた。
確かに、ただ気味悪がられては制御に使われた命も報われないかもしれない。

「……さあ、行きましょうか。いつまでもこんな所にいては通報されてしまうかもしれなくてよ?」

リフィルさんの言葉に皆は我に返る。

全員が慌てて柵の向こうの階段を下りていくと、船のような乗り物の前に見知らぬ忍者が立っていた。名前はくちなわというらしい。しいなさんが親しげに話している。

「よーし、ロイドくん。さっきのパックを使ってみ?」

「えっと、こうか?」

ロイドさんがゼロスさんの指示に従い、懐から出した謎のパック(精霊研究所で貰ったらしい)を翳すと、乗り物が縮んで煙と共に消えた。

「うわっ!?」

「すご〜い! 不思議だね〜!」

「うわー! どうなってるんだろう!!」

まるで手品のような出来事に、ロイドさん達は感嘆の息を零す。
が、はしゃいでいるのは彼らだけで、他は動じる様子もなく平然としていた。ミトスくんからも驚きは伺えないので、恐らく知っているのだろう。

「……どうして見覚えがあるのかしら」

一人考え込むリフィルさんを見て、視線を前へ。ロイドさん達の方へと向ければ、彼らはパックと乗り物を遊び道具にして、自由気ままに遊んでいた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ