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□あざと系男子の攻略術
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渚「ナマエせーんぱいっ!水泳部入らないっ?」
「……来たな勧誘魔め…!」
いつもと同じ時間に家を出て学校には定時の10分前に着き、クーラーが着いて涼しくなっているであろう教室へと入るとそこにはかわいい顔をした後輩がいた。離れてても分かるクリーム色をした頭ががパッとこっちを振り返って挨拶もなしに朝一番の一言がそれだった。そしてそれに対する私の答えはもうとっくに決まっている。
「水泳部には入りません!」
渚「えぇぇー!!」
私の返事を聞いていつものように机に顔を突っ伏した彼。目だけをこちらに向けてうるうると私に視線をぶつけてくる。うっ…!なんか可哀想なことしてるような気持ちになってきたけど騙されないんだからね!
「そんな目したって私は入らないからね」
渚「…やっぱりダメかぁ。ナマエ先輩はこれで落ちるほど簡単じゃないもんね。」
泣きそうな顔から一転して悪戯っぽい笑みに変わる。思わずドキッとしちゃったのは私だけの内緒だ。そうか、普段かわいい子がやるとギャップがあって女の子はみんなやられちゃうんだな。葉月くんは最初ふわふわした子って言うのが第一印象だった。初めて会ったのは七瀬くんと橘くんとお昼ご飯を食べていた時だった。席が近かったから一緒に屋上に居たところに走って来たのが葉月くん。その後ろからもう一人来てたな…。り、竜ヶ崎くんだっけ?んで話しながらご飯食べてたら次の日からお昼はそのメンバーで食べるようになった。それで気づいたら葉月くんに懐かれてて、部活の勧誘をこれでもかと言わんばかりにしてくる彼は目が合うとにこっと笑った。
渚「水泳部入ってください!」
「嫌です。」
渚「え〜!何の収穫もなしに教室戻れないよ〜!」
「昨日も一昨日も何の収穫もなしに帰っていったでしょ?分かったらさっさと帰る!」
渚「まだあと5分あるもん!」
遥「おはよう」
真「2人ともおはよう。」
だだっ子葉月くんに変わったところに七瀬くんと橘くんが登校してきた。2人とも朝から爽やかだなぁ。日の光をそのまま擬人化した感じがする。そんな二人を眺めていると、苦笑いした橘くんと目があった。
真「部活勧誘?」
「そうだよ朝から!2人からも何か言ってよ〜!」
渚「入ってくださいだって!」
「葉月くんはお口にチャック!」
自分の唇の上でチャックを横に閉める素振りをしてから2人に目を向けた。
遥「…名前が水が好きなら入ればいい。絶対楽しいから。」
「……うん。」
やっぱり七瀬くんは安定だな。水が大好きということが今の一言で十分に伝わってきた。確かに水が好きな人には楽しいんだろうね。ただ好きでも嫌いでもないからなんとも言えないけど。
真「俺は…名前ちゃんが入ってくれるなら嬉しいよ。やっぱりみんないた方が楽しいしね。」
そう言ってニコッと笑った橘くんの笑顔にノックアウトされそうになった。ちょっと揺らぎそうになったのは内緒だけど。そんなこと言われたら悪い気はしないでしょ。
渚「ちょっと名前先輩!なにマコちゃんにたぶらかされそうになってるの!?」
「たぶらかされそうになんてなってないよ!それに葉月くんはどっちの味方なのっ?」
(キーンコーンカーンコーン)
「あ、予鈴なった。ほら、葉月くん戻らないと。」
渚「っ…諦めないからね!」
涙を拭く真似をしながら教室を走って出て行く葉月くん。そんな様子を見て私達三人はポカーンとしていた。