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□まこちゃんの手料理
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「私に食べ物を恵んでください。」
・・・・・・。
真「…えっ!?何やってるの名前ちゃんっ!?」
「見れば分かりますようにこのようにd」真「とりあえずいいから中に入ってっ!」
言ってる最中でまこちゃんに遮られて無理やり立たせられる。スカートのホコリを払う間もなく腕を引かれて彼の家に入ってしまった。あぁ、おじゃましますも言わずに入っちゃった。いくら私でもそこまでの礼儀知らずではない。ま、あとで言えばいいか。
なんて思っていると横から視線を向けてくるまこちゃんが。
「何?」
真「何?じゃないよ!人の家の前でなにやってたの!?」
「土下座。」
真「それは見て分かるよ!どうしてあんなことしたの!?」
次から次へとまこちゃんから出てくる質問という名の説教タイム。こうなると長いんだよな〜どうにかして話題を…。でもそらしたら恵んでもらえなくなるかも。だったらこのまま説教受けてる方がいいな。うん。
「それは、まこちゃんに夕飯をご馳走になるからです!」
真「夕飯?」
「そう!夕飯!ご馳走になりまーす!」
真「俺はそれでもいいけど…ハルは?いつもハルの家で食べてたよね?」
「でももう我慢の限界っ!1ヶ月間三食すべてのおかずにサバが出てきたときの気持ちがまこちゃんには分かりますかっ!?」
真「…ハルならやりかねないね…。」
毎日毎日サバサバサバ。朝起きてサバ、弁当開けてサバ、夕飯でサバ。今や私の血や肉はサバからできているに違いない。そのうち体からサバ臭がしてきてもおかしくないはずだ。もうこれ以上のサバ三昧に耐えられなくなった。
「それでハルにそれを抗議したら無表情で、そんなにいやなら真琴に作ってもらえって言われたからハルの馬鹿やろうー!って叫びながらここに来たの!」
真「そう思うのはいいけど叫びながら来るのは止めようね。それでどうして土下座をしてたのかな?」
「私の誠心誠意をお見せするためです!ということでおじゃましまーすっ!」
ちゃんと一言言ってからまこちゃん家に上がり込む。(靴は揃えたよ!)手前にあるドアを押すと、一瞬にして変わる温度。冷たい空気が熱くこもった私の体を包み込んでくれた。
「すっずし〜い♪」
真「まったく名前ちゃんは行動するのが早いんだから…」
私の後に入ってきたまこちゃんがドアを閉めて椅子にかけてあったエプロンをした。かわいい淡いピンク色をした水玉柄だ。まこちゃんによく似合っている。
真「タイミングよかったね。俺もこれからご飯だし何が食べたい?」
「カレーうどん。」
真「この時期にそんな熱いもの食べるなんて名前ちゃんぐらいだよ」
「冷房ついたクーラーの中に居るんだから大丈夫だよ!」
真「じゃあカレーうどんね。」
キッチンの方にまこちゃんが消えていって私だけがその部屋に取り残される。エアコンの稼働する低い音がかすかに響いていて、完全に静かなわけじゃない。だけど、静かだ。いつもいるはずのあの子達がいない。
「ねぇまこちゃーん」
真「なにー?」
「ちびーずは?」
真「あぁ今皆で旅行に行ってるんだよ。二泊三日って言ってた」
「まこちゃんは行かないの?」
真「部活あるから行けないよ。部長が旅行で休むってあんまり良いことじゃないでしょ?」
そう言って微笑んだまこちゃんの表情にはかすかな寂しさが浮かんでいて。良くも悪くも彼らしい。部長だって用事があったら休んでもいいと思うんだけどなぁ。
「律儀だなぁ…」
真「そんなことないよ」
ぐつぐつとお湯が沸く音がする。うどん楽しみだなぁ…まこちゃん料理上手いし。
「ありがとね、まこちゃん」
真「…どういたしまして」
―――…
「うっわぁー…!おいしそうっ…!」
真「そう言ってもらえるとうれしいな」
「これ絶対おいしいよ!食べる前からでも十分おいしいっ!」
スパイシーな香りをまといながらもくもくと出る白い湯気を立たせ、私の前に置かれたカレーうどん。じゅるりと出そうなよだれを慌てて抑えてお箸を持つ。
「まこちゃんも早く席に着いてっ」
真「はいはい」
まこちゃんを向かいの席に座らせて手を合わせる。すぅっと息を吸って、
「いただきますっ!」
そう言ったと同時に麺の中に箸をくぐらせて何本か挟んで口に運ぶ。はふはふしながら口に入れた瞬間香ってくるカレーの味っ!もちもちとしたうどんに良く合う。めんつゆもいい感じできいてるし、すべてがパーフェクト!口の中の物が全て食べ終わったあと、まこちゃんの両手をつかんで握った。
真「へっ、名前ちゃんっ!?//」