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□人魚探究
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「私さ、人魚っていると思うんだよね。」
最近整備したばかりのプールで、俺たちが好きなだけ泳いでいた時だった。名前がプールサイドに腰かけて膝から下を水の中に浮かべている。その時ふと彼女が思いついたように口を開いた。
遥「は?」
真「名前ちゃんっ…?」
渚「人魚ってナマエちゃん…!」
怜「いるわけないじゃないですかっ。」
江「名前先輩いきなりどうしたんですか?」
俺が呆れたように口を開き、心配そうな真琴と焦ったような表情を浮かべた渚が彼女の方に寄る。プールサイドに立っていた礼と江も振り向いて寄っていく。
「なんでみんな変な顔してるの?」
遥「お前がいきなりそんなこと言いだすからだろ。」
キョトンとした顔にそう伝えると、だってさーと話を続けた。
彼女はやっぱり自由人だ。
「人魚ってきれいでしょ?そんな存在が世界のどこかに存在してるって思ったら、自然と嬉しくならない?」
にっこり笑顔で言う名前に、俺たちは面食らった。まさか彼女は…本気で人魚がいると信じているのだろうか?いや、まさかなそんなことは…。いくら名前でもいい加減考えられるよな…?
渚「人魚って想像上の生き物でしょっ?ナマエちゃん信じてるのっ!?」
「人魚はきっといるよ!だって世界は広いんだよっ?」
江「名前先輩のそういうバカっぽいとこもかわいいですーっ!」
「ちょっ、江ちゃん今私の事バカっぽいって言ったなー!」
渚の言葉に言い返した彼女に、江が抱き着いた。名前は嬉しそうに目を細めて笑っている。
真「どうしていきなり人魚がいるって思ったの?」
「昨日ね、ニュースで見たの。人魚がいたって。」
礼「それ本当に人魚だったんですか?」
「そんないぶかしげな顔しないでよ礼ー!ま、人魚って言っても人間なんだけどね。」
名前の話がよくわからない。人魚だけど人間?人魚って魚のハーフだよな?しかも俺の大好きなサバの。
理解できていない俺たちをくみ取ったのか、彼女が呆れたように口を開いた。
「人魚のまねをしている女性がいるの!」
遥「…なんだ。そういうことか。」
「なんだとは何よ!」
だったら最初からそういえばよかったのに。って言ったらきっと反撃されて終わるから言わない。真剣そうな顔してたから本当に人魚がいるのかと一瞬疑ったけど。
「人魚の真似をしてる女性がいるってことは、きっと本物はこの世界のどこかで生きてるんだよ!そして私たちはその一秒一秒を人魚とともに刻んでる。そう考えたらさ、この瞬間って大切なものに思えるでしょ?」
ニカっと花でも咲くような笑みを浮かべて、堂々と俺たちに言い放った。名前の言った言葉には重みがある。…いいこというんだな、たまには。
だけどいつも見てる笑顔が、なぜだか今だけ特別なものに見えてしょうがない。プールの波で反射してるからなのか、彼女の言葉にやられてしまったからなのか、それとも…。
真「名前ちゃんはさ、どうしていきなり思い出したの?」
「えっとね、遥の泳ぎ見てたからかな!」
遥「…俺の?」
予想していなかったところで名前が出てきてびっくりした。確認するように目線を彼女の方に向けると、うんうんとうなずいていた。
「遥の泳ぎって、昔から人魚みたいだなーって思ってたの。すごく綺麗で全身使って泳いでる感じ!その泳ぎを見るとこっちまで泳ぎたくなっちゃうんだよねー。」