黒バスshort
□とある昼休み。2
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鐘がなったらミッション開始。この作戦は、誰にもバレてはならない。
(キーンコーンカーンコーン)
――――――ミッション、スタート。
ガタンッと音を立てたままみんながこっちを向くのを気にせずに私は協力者とは真逆の方向に廊下を走っていく。途中目を見開いて驚いた顔をした黒子くんがいたけれど、目を合わせるわけにはいかない。なぜならこれは…逃亡劇だからだ。
私に課せられたミッション。それは――――――キセキの人間に会わずに、さつきと『2人っきり』でお昼ご飯を食べることだ。文字通り2人っきりで。
なぜか知らないがキセキのやつらは私をこれでもかと言わんばかりに溺愛しているために(こう表現するしかないのだ)いつも邪魔されてばかり。ガールズトークも出来ないままひたすらにいじられていじる昼休みなどもう御免だ。2人っきりで食べたい。
「よし、とりあえずここに隠れよう。」
教室を出て一つ目の角を左に曲がって階段を降りてその影に隠れる。黒子くんは私についてきていないみたいだ。一人目は巻いた。しかし安心は出来ないだろう。
彼が私の方についてきていないと言うことは協力者の方について行ったということ。どうして付いていったのかって?その協力者は私の姿をしているからだ!
この作戦を遂行する上で最も大変なのは同じクラスである黒子くんをどう撒くかということだった。それで私が思いついたのが陰分身を作ることだった。
そうして、授業終了とともに二人で走り出し黒子くんを撒く。ある意味賭けだったけど上手く引っかかってくれてよかった。あとで黄瀬君の使用済みハンカチをあげよう(黄瀬君ごめんね)。
「と、言うわけでそろそろ行きますかっ…!」
誰も周りにいない。上下左右前方後方よーしっ!ここから先はノープランだけどどうにかなるだろう!というわけで桃井ちゃんの所にしゅっぱーつ!…しようとしたときだった。
緑「あぁ、こんなところにいたのだよ、名前。」
「(ビクゥゥッ!!)」
一歩踏みだそうとしたところでストップする私の足。この声はっ…緑間くんかっ!バッと後ろを振り返った先には緑色の髪の毛が…………なかった。
「(小声)へっ?」
緑「まったく、勝手に離れることを許した覚えはないのだよ。」
はてなで埋め尽くされる頭の中。いないのにどこから緑間くんが…あ、もしかしてっ!
そろりと壁の端っこから覗くと壁に埋め込まれた非常ドアの前で、小さいフィギュアのようなものを手にしてブツブツと独り言を言っている。さっき非常ドアを隔てて私がいたから声が聞こえたのか…でも何で私の名前…。そしてそのフィギュアが何かわかった瞬間に私は急いで戻った。
緑「分かったか名前」
「(私のフィギュアだったぁぁぁーーー!!!!!)」
ゾワワワワッと全身に広がっていく鳥肌。キモイ、気持ち悪いよ緑間くんっ!!ってかあんなのどうやって作ったんだいったい!私のフィギュアなんてあるはずないだろ!気持ち悪いわーーー!!!
緑「今日のラッキーアイテムのピンクのシャーペンを握らせるのだよ」
「(あれは私のシャーペンじゃないかっ!)」
緑「次は…定規でももらいに行くのだよ」
やべぇぇぇええっ!!!緑間くんガチで危ない人だ変態だ変人だっ!!もっと常識のある人だと思ってたのにっ…!
緑「さてそろそろ本物に会いに行くのだよ」
背筋から這い上がってくる悪寒を止めるすべもなく、彼が立ち去るまで息を潜めていた。
「はぁ〜…」
今度から緑間くんには近づかないようにしよう。そして持ち物にはすべて糸を張り巡らせておくんだ、よしそうしよう。
彼に対しての印象を変えたところで早速目的地の旧校舎へと目指すことにした。こうしている間にもさつきと過ごす時間は減っている。
「行くか。」
そしてここから旧校舎へ向かうのに通るのが、一年生の教室が並ぶ廊下だ。同じ学年だけど私の教室は二階にある。知り合いはあまりいないにしろキセキの連中がいるため早急に走り抜ける必要がある。
すぅ…と息を吸って一気に走る。距離にしたら50メートルぐらいだからあんまりない。後もう少しで次のステージに差し掛かる…そう考えたところで感じた殺気。
私はすぐに方向転換をして近くにあった女子トイレの壁に身を隠した。この気配はーー。
青「ったく名前のヤローどこ行っちまったんだよ」
「(ガ・ン・グ・ロだぁーっ!!)」
さっきまで私が隠れていた階段を下りてやってきた青峰くん。どうやら私を探しているようだ。危ない…動くのが後少しでも遅れていたら捕まってしまうところだった。