シリーズ

□02
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………え?
鳳さんによって遮られ、声にならない声がのどの奥から出た。座ったまま私の方を鋭い瞳で見ている。今にも射抜かれてしまいそうで少し怖い。帝さんがイスから立ち上がって私の方に寄ってきた。頬がぷくっと膨らんでいる。



ナ「ボクたちが今日、ここに何時間かけて来たと思ってるわけっ?三時間だよ?三時間!このためだけに三時間もかけてきたのに何もなかったとかあり得ないんだけど!」

「そ、それは本当に申し訳ないですっ。でも私変えるつもりは」瑛「お前の意志などどうでもいい!俺達がやると言ったらやるんだ。それについてくるだけでいいんだよ」

綺「……お前が何を気にしてそういうのかは知らない。でも、俺達はアイドルだ。志を持ってる。お前の曲を選んだのは俺達だ。」

ナ「今日の綺羅はよくしゃべるね。めっずらしー」



心の中を読んだかのように皇さんが言葉を紡ぐ。この人たちは分かってる。何が原因で私が頷けないのか。でも、私はまだ未熟で。一人前でさえないのに。



瑛「お前、さっき自分のことを未熟だからといったが…いつになれば未熟じゃなくなる?来年か?5年後か?それとも10年後か?」

「そ、それはっ…!」

瑛「自惚れるな。お前が何年かけて一人前になったところで、今と同じ土俵に俺達がいるはずがないだろう。これからもっと進化していくHE★VENSに、ようやく一人前になったお前が俺達と一緒に仕事ができる確証などどこにもない。」

綺「……掴めるはずの機会を掴まない人は愚かだ。」

「っ……!」



この人たちは、私の考えや価値観までも変えてしまう。私がさっきまで悩んでいたのが嘘みたいにしこりが消えてしまった。こんなにも影響力のある人たちと、やっていけるだろうか。



春「……名前ちゃん」



今までのやりとりをそばで見ていたお姉ちゃんが私の名前を呼んだ。柔らかい笑みを顔に浮かべながら私の手を取る。



春「勝手に私が作っちゃったチャンスでごめんなさい。でも、名前ちゃんにはこの機会を使って欲しい。目の前にあるチャンスを、有効に使って…!」

「お姉ちゃん…」


瑛「それに、お前の曲を俺が選んだ時点でお前は俺のものだ。覚悟するんだな」

ナ「瑛一だけのものじゃないけどねっー!」

綺「……よろしく。」



こんな表情見たら、もう断る理由なんてなくなってしまった。



「はい。よろしくお願いします!」




02 掴む
(さぁここからが本当のスタートなんです)
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こんな表情が笑顔だったらいいな。


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