シェアっちゃおーぜっ!
□01
2ページ/6ページ
「ねぇお母さん、今なんて言ったの?」
母「あら、聞こえなかった?」
聞こえなかったわけじゃない。
もう一度聞き返して確かめないと信じられないのだ。
優雅にティーカップを持ってゆっくりと紅茶に口を付けた彼女。
そして私の目を見てもう一度、さっき言ったことを繰り返した。
母「この家をシェアハウスとして売り出すことにしたわ!」
「…はあああああああっっっ!?!?」
そして私はまた同じように大きな叫び声をあげたのだった。
「どういうことなのこの家をシェアハウスにするって!?っていうか最初から全部説明しなさーいっ!!!」
母親のシャツの襟首をつかんでこれでもかといわんばかりに大きく揺さぶる。
食器とか食べ物が音を立ててるけど気にしてられない。
今の私にはそんなことに気にしてる余裕なんかないのだ。
母「ちょっとぉぉ〜名前ちゃん離してぇ〜〜」
「全部吐き出すまでこの手は絶対に離さないからねっ!ってかそんなこといつ決めたのよっ!?」
一通り言い終わった私はゆさぶりを止めて肩から手を離してあげた。
母親はといえば頭がくらくらしているのか、目をぱちぱちさせて周りを見ている。(100%私のせいだけど。)
落ち着いたのを見計らって再び母親を尋問にかける。
「いつ決めたのそんなこと?」
努めて冷静に。母親の前で無駄にわめくのはいいことじゃないと自覚している。
落ち着け。この女に惑わされてはダメだ。しっかり自分を持たないと。
母「2か月前よ!」
「はぁっ!?2か月前!?」
ダメだった。さすがわが母親とでもいうべきだろうか。
どれだけ冷静になろうと努力しても一瞬でこの女はそれをぶっ壊す。
冷静になれない私をよそに、母親はテーブルの上に置いてあったフルーツバスケットの中から林檎を取り出してナイフで皮をむき始めた。
「どうしてそんな前に決めたことを今の今まで私に何の相談もよこさなかったのよっ!?」
母「ほらーだってあの時私海外にいたじゃない?ジェイコブとラスベガスでカジノやってた時!」
「…それで?」
母「そしたら大損しちゃってねー!私借金作っちゃったのよー!」
「しゃ、借金っ!?」