シェアっちゃおーぜっ!
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「…いいよ。」
母「えっ…!?」
「シェアハウス。やってもいいよ。募集しちゃったんでしょ?」
少しだけ笑みを浮かべて、お母さんにそういうと、パァッと輝くような笑顔を返された。
母「さっすが私の名前ちゃんねっ!嬉しいわぁー♪」
「はいはい。」
嬉しそうな顔で私を見ているお母さんに、何だか照れくさくなった私はふいっと視線をそらしてお皿に乗っているウサギに手を伸ばした。
そういえば昔から林檎食べるときはウサギ型だったなぁ。
なんでだか知らないけど絶対ウサギ型にしてた気がする。
指でもって口に運んで租借すると、お母さんも同じように林檎を食べた。うん、おいしい。
母「そういえばいい香りがするわね。何か作ってるの?」
「あぁ。そうだった。」
キッチンの方から香ばしいにおいがしてきて、さっきトースターにパンを入れたことを思い出した。
さすがにもう焼けているであろうそれを、お母さんと私のお皿を持ってそっちへ向かった。
小さい食器棚の上に乗っているトースターからは、パンが少しだけはみ出ていた。
いい匂い!朝はご飯もいいけど、パンも外せないよねー。
いい感じに焼き色がいついたパンをお皿に乗せて、近くに並べてあったジャムの中からマーマレードを取って一緒にリビングに持っていく。
そこにはまたさっきのようにウサギ型に向いているお母さんの姿があって、なんだが笑ってしまった。
「また切ってんの?」
母「なんかハマっちゃうのよこれ!」
年齢よりも数十歳若い表情で笑うお母さんの肌にはシミも吹き出物もなくて。
現役女子高生の私にとっては羨ましくて仕方ない。
年相応に見えないから老若男女誰にでもモテる。
…私、お母さんの血を受け継いでいるんだろうか。
母「ほら、突っ立ってないで早く早く!」
「わかったよ」
それぞれの前にお皿を置いて席についた。
マーマレードのふたを開けてスプーンですくってパンの上に乗せて広げる。
ジャムの中だとマーマレードが一番かな。
イチゴもいいけど、でも柑橘系の爽やかな感じがまたたまんない!
まぁ甘いものは全般的に好きだけどね。
「お母さんが朝からいるって変な感じがする」
母「どうして?」
「だっていつも海外に行ってて会うことなんてほとんどないでしょ?帰ってくるのも夜だったりするし。」
母「そういえばそうね…。じゃあ今度からは朝に帰ってくるようにするわ!」
「そういう問題じゃないんだけどさ…。」
塗り終わったマーマレードをお母さんに渡して、かぷり、とパンをかじる。
んー!さくっとした食感!これでこそパン食べてますって感じっ!
マーマレードもいい感じのバランスだし。
「日本に戻ってきたってことは、今付き合ってる人と喧嘩でもしたの?それとも、別れたの?」
私がそういうと、お母さんが少し頬を膨らませた。そんな表情しても怒ってるようには全然見えないけどね。
いい年してこんな評定できるの母さんぐらいだと思う。本当に。
また一口パンをかじる。
母「だって…マイクが悪いのよ?」
「(今度の彼氏は『マイク』か…。)」
母「向こうで新しく立てる家の壁紙の色を決めてたのに。私はピンクがいいって言ったの。でも彼はブラウンがいいって。だから私はじゃあブラウンでいいわって言ったら、君の好きな色でいいよって言ってくれたの。私たち二人とも相手の色がいいってひかなくて…。」
「それでケンカになってこっちに戻ってきた、と。」
母「そうよ!」
「…はぁ。」
壁紙の色でもめただけで日本に帰ってくるって大人気なさすぎ。しかも相手の好きな色を尊重しあいすぎてって…ただのバカップルじゃん!
そんなのでケンカする前に借金をどうにかするのかのほうが問題でしょうがぁ!
まぁ、そういってるお母さんの顔が幸せそうだからいいんだけどさ。
シェアハウスなんてとんでもないこと言いだしたときはどうなるかと思ったけど、でも意外と楽しみかもしれないなぁ。