* 沖銀 *
□いえす、fall in love
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いえす、fall in love
「これ、どうするかな…」
真選組副長土方十四郎はピンクの包み紙の飴を手に独り言を呟いた
今日土方は非番で黒の着流しを着ながら団子屋のベンチに座っている
〜以下土方の回想〜
朝、真選組の屯所にて
「おーい、トシ!」
「なんだ、近藤さん」
「お前にこれやるよ」
突然話しかけてきた局長近藤勲が土方に差し出した物は一つの飴だった
「なんだこれ?」
「とっつぁんに貰ったんだが、どうも惚れ薬入りの飴らしい。いい加減嫁でも取れって言われてなぁ。好きな女に食べさせろって言うんだけどお妙さんは自分の手で落とすべきだと思ってな」
土方は惚れ薬と聞いて一瞬、銀色が思い浮かんだがすぐ様頭を振って追い払った
「貰っても使う相手が居ねぇよ」
「好いている女くらいいねぇのか?トシだって男だろう。……はっ!もしかしてもうモテるからいらねぇよ、という言外の自慢か⁈いいよな、色男は!そうやって…」
「わかった!とりあえず仕事に戻ってくれ!まだ手ぇつけてねぇ書類があるだろ。これは貰っとくから、」
ぐずぐずし出した近藤を見兼ねて勢いで預かると言ってしまった土方は思わず言葉に詰まる
「おぉ、貰ってくれるか!じゃあ俺はお妙さんの処へ行ってくる!」
「あ、近藤さん!」
「お前も恋人くらい作っとけよ!
お妙さ〜ん!今から貴女の勲が行きますからね〜!」
豪快に笑いながら飴を土方に押し付けた近藤は叫びながら志村邸まで走って行った
「あの人、またストーカーするつもりか…」
止めるのもめんどくさいとばかりに吐き出されたため息がその場に虚しく響いた
〜回想終了〜