そして鷹はペンギンになり翔ける

□“再会”と“大失敗”
2ページ/4ページ



「日向ぁ、大丈夫か?」


月島が、「日向遅くない?あまりの緊張に失神してたりして(笑)」なんて言うから、思わず心配になってトイレまで来てしまった。


「あ、泰長」


丁度出てきた日向に鉢合わせ声をかけるも、全く元気がなかった。顔が青く、全体的に元気がない。


「日向、落ち着いて。そんなんじゃ速攻できないよ」

「速攻……できない……交代?!」

「いや、だから落ち着けって!」


あぁダメだ。何を言っても通じない。全てが緊張に繋がってる。
一人にしといても変に考えて緊張するし、周りが言っても緊張する。…どうしたらいいんだ。


ふぅ、と困り果てていると扉が開き、影山が気合いでも入れに来たか―――と目をやると、入ってきたのは影山ではなかった。正確にいうと、烏野の人ではなかった。


「あ」
「え?」


俺を見るなり声を上げる青城の部員。
知り合いかと思いよく見たけど、知り合いではなかった。


「あの、なにか」
「……『鷹』だ…」



……納得。自分が異名持ちだったのすっかり忘れてた。



「どーも。今日はよろしくな。それじゃ!」
「あ、あぁ」



取り敢えず愛想笑いを浮かべ、日向を引き連れてトイレを出た。



「泰長……」


力なく俯く日向に呼ばれ、振り返る。


「なに?」

「俺一人じゃ、試合出れないよな?」

「そうだな」

「…」


あっさりと返せば、日向の肩は大袈裟に跳ねた。


「や、やっぱおれが下手だから…」

「あー、そうじゃなくて」

「?」

「バレーって、6人でやるもんじゃん。日向一人じゃバレー出来ないべ」


な?と聞けば、少し遅れてコクコクと頷く日向。


「今日は、俺と、大地先輩と、田中先輩と、影山と、月島と、日向で、バレーやるんだよ。日向一人じゃないよ」



少しずつ意味を理解したのか、日向の顔は少し安堵の色が見えた。


「日向が下手なの、皆知ってるから」

「うぐっ」

「だから、皆でカバーするよ」

「!」


ここまで言えば、あとは本人次第だと思う。今の言葉でだいぶ戻っては来てるし、変人速攻も出来そうだ。


「じゃあ俺、先に行ってるから」




.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ