そして鷹はペンギンになり翔ける
□“再会”と“大失敗”
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「日向ぁ、大丈夫か?」
月島が、「日向遅くない?あまりの緊張に失神してたりして(笑)」なんて言うから、思わず心配になってトイレまで来てしまった。
「あ、泰長」
丁度出てきた日向に鉢合わせ声をかけるも、全く元気がなかった。顔が青く、全体的に元気がない。
「日向、落ち着いて。そんなんじゃ速攻できないよ」
「速攻……できない……交代?!」
「いや、だから落ち着けって!」
あぁダメだ。何を言っても通じない。全てが緊張に繋がってる。
一人にしといても変に考えて緊張するし、周りが言っても緊張する。…どうしたらいいんだ。
ふぅ、と困り果てていると扉が開き、影山が気合いでも入れに来たか―――と目をやると、入ってきたのは影山ではなかった。正確にいうと、烏野の人ではなかった。
「あ」
「え?」
俺を見るなり声を上げる青城の部員。
知り合いかと思いよく見たけど、知り合いではなかった。
「あの、なにか」
「……『鷹』だ…」
……納得。自分が異名持ちだったのすっかり忘れてた。
「どーも。今日はよろしくな。それじゃ!」
「あ、あぁ」
取り敢えず愛想笑いを浮かべ、日向を引き連れてトイレを出た。
「泰長……」
力なく俯く日向に呼ばれ、振り返る。
「なに?」
「俺一人じゃ、試合出れないよな?」
「そうだな」
「…」
あっさりと返せば、日向の肩は大袈裟に跳ねた。
「や、やっぱおれが下手だから…」
「あー、そうじゃなくて」
「?」
「バレーって、6人でやるもんじゃん。日向一人じゃバレー出来ないべ」
な?と聞けば、少し遅れてコクコクと頷く日向。
「今日は、俺と、大地先輩と、田中先輩と、影山と、月島と、日向で、バレーやるんだよ。日向一人じゃないよ」
少しずつ意味を理解したのか、日向の顔は少し安堵の色が見えた。
「日向が下手なの、皆知ってるから」
「うぐっ」
「だから、皆でカバーするよ」
「!」
ここまで言えば、あとは本人次第だと思う。今の言葉でだいぶ戻っては来てるし、変人速攻も出来そうだ。
「じゃあ俺、先に行ってるから」
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