そして鷹はペンギンになり翔ける
□“守護神”
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試合開始。
俺は勿論リベロで、烏野チームの縁下先輩のところでスタート。前衛は大地先輩と日向と田中先輩だ。
日向と影山の速攻は良い感じで、町内会チームの皆さんは唖然。毎回これを見せるときの反応が皆一緒なのが面白い。
「日向ナイス!アイスかかってるんだから頼むぞ!」
「泰長の心配はアイスなのかよ!」
うん。
学生は金欠だからね。奢りは大変なんだよ。もし西谷先輩がハーゲンダッツを選んだら俺の財布が危ない。だから日向、頑張ってくれ。
「来るぞ!」
影山の声にハッとすれば、ラリーが終わって、町内会の人がスパイクモーションに入っていた。
「…ッッ!」
ブロックしきれなかったのか、ボールはこちら側のコートに叩きつけられ―――――
「…っと」
――る前にフォローする。
「泰長ナーイス!」
「くっそー、茶髪くんやるな」
綺麗に上がったボールはそのまま影山の手に吸い込まれ、また日向に上がる。
「よっしゃ日向いけぇ!」
影山の手から素早く上がったトスは見事に日向の打点に入り、相手コートの床に叩きつけられる。
「ナイス日向ー!」
「いぇーい」
田中先輩と2人で両手を上げて日向に向けば、日向も「ウェーイ」と両手を上げて飛び跳ねる。
「おっしゃ、このままアイスだ!」
「だー!」
日向と2人でワァワァ盛り上がっていると、後ろから凛とした声が聞こえる。
「させねぇよ」
「西谷先輩?」
「こっちにはエースがいるんだからな!お前らなんてケチョンケチョンだ!」
「…今時ケチョンケチョンて…ブフッ」
笑ってしまった。ケチョンケチョン…。
でも、満面の笑みの西谷先輩と、困ったように笑う東峰先輩を見て分かった。
先程までのグラグラと不安そうな雰囲気はなくて、どこか穏やかな雰囲気になっている。
西谷先輩と東峰先輩の距離も、ちゃんと近づいたんだ。よかった。
「…こっちには“最強の囮”と天才セッター、それに守備力抜群の大地先輩ですよ!こっちだってケチョンケチョ…ブフッ」
「笑いながら言うんじゃねぇよ!」
だめだ、ケチョンケチョンに笑ってしまう。西谷先輩に睨まれてるけど笑ってしまうものはしかたない。
「ゲホン…まぁ―――負けないってことです!」
「何事もなかったように仕切り直したぞコイツ…」
後ろから呆れた田中先輩の声が聞こえたけど気にしない気にしない。
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