そして鷹はペンギンになり翔ける

□嵐
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「で!旭さんは?戻ってますか?」


清水先輩に平手打ちをくらいながらも、どこか嬉しそうな西谷先輩はひょこりと此方に戻り、そう口に出した。

あさひ…。聞き覚えのない名前だ。西谷先輩が「さん」と呼ぶということは3年であることが分かるが。




「………いや」


気まずそうに顔を俯かせたまま、大地先輩はぽつりと返す。



「―――あの根性無し…」

「!こらノヤ!エースをそんな風に言うんじゃねぇ!」

「うるせぇ!根性なしは根性なしだ!」



田中先輩が叱るも西谷先輩はさらに声を上げ、体育館入り口に行ってしまった。



「待てってばノヤっさぁん!」

「前にも言った通り、旭さんが戻んないなら俺も戻んねぇよ」



ピシャリ、と体育館の扉が閉まる。

「旭さん」は烏野のエース。でも、今はいないらしい。
大地先輩は前に「エースとリベロはわけあっていない」と言っていた。この二人のことで間違いはなさそうだ。
にしても…何があったんだ。
このまま西谷先輩、戻ってこないのかな。


―――繋ぎとめないと。



「あっオイ泰長!」



――――――――――――――――




「西谷先輩」

「あ?…灯真か、なんだよ」

「あの、レシーブ教えてもらえませんか?」



前を進む、自分より少し小さな黒い影に声をかければ、少し驚きながら西谷先輩は振り向いてくれた。



「なんで俺なんだよ。レシーブなら大地さんに教えてもらえばいいだろーが」

「たしかに大地先輩もレシーブうまいですけど…西谷先輩がいいというか…リベロじゃないですか。大地先輩言ってましたよ?『西谷は烏野の守護神だ』って」

「!!」



ピクッ、と西谷先輩の眉が上がる。
もう少し…!



「烏野の守護神にレシーブ、教わりたいんです。お願いします。西谷先輩」


バッ、と勢いよく頭を下げると、西谷先輩が唸った。


「〜〜〜ッッ!ああクソ!部活には出ねぇからな!レシーブ教えるだけだからな?!」

「!」


くるりと西谷先輩は向きを変えて、ザッザッと砂利を踏み鳴らしながら俺の前を通りすぎる。


「え、それって…」

「灯真はやくしろよ!なに突っ立ってんだ!練習するんだろ」

「…はい!」




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