そして鷹はペンギンになり翔ける

□vs“大王様”
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「ね〜及川さんまだ出ないのかなぁ!」
「バカ!ちゃんとウォーミングアップしないとケガしちゃうんだから!」
「エーッそれはダメ〜!」


後ろで騒ぐ女の子たち。まさかここの女の子全員、及川さんのファンなのだろうか。
…及川さんどんだけ人気あるの。


「でもさー、さっき及川さんといた人もかっこいいよねっ!」



女の子の一人がそんなことを言い始め、耳を疑った。
及川さんは確かに女の子に受けがよさそうなイケメンだけど、俺なんか騒がれる要素なんてないと思う。
ずっとバレーばっかりで、女の子の友達なんてマネージャーくらいしかいなかったし、差し入れとかもらったことがない。
部活ばっかりだから私服のパターン少ないし。スウェットとかジャージ多いしオシャレとは言えない。髪だってなかなか切りに行けなくて、スポーツマンらしくないと思う。

烏野はあまり厳しくないから大丈夫だけど、厳しい学校だったら俺の今の髪はアウトだ。耳にかかってしまうくらい長い。前髪は邪魔にならないように、女の子みたいに端をピンで留めている状態だ。


それなのにかっこいい?青城女子は大丈夫なのだろうか…!



「分かる!及川さんとは逆っぽい雰囲気ー!」


同意するようにキャッキャとはしゃぐ女の子達の言葉に更に耳を疑う。おいおいなぜ同意した。もっとかっこいい人烏野にいるから!

大地先輩なんて優しくて穏やかでまさに頼れるお父さんみたいだし、菅原先輩なんて爽やかで優しそうな甘い顔してるじゃん。
月島だって背が高いし眼鏡だし頭良さそうだしクール(?)だし、影山だって怖そうだけど男らしい顔してるし、田中先輩なんてもう漢!って感じしてるじゃん…!



「やっぱ人気あんね、ペンギンちゃん。さっそく人のファン取った感じ?」

「取った感じ?じゃねぇよ。なんで俺なんだよ…」

「そんな顔しといてよく言うよね。ペンギンちゃんも充分顔が良いと思うけど。なんでそんなに鈍感なんだか」

「モテたことねーもん」

「彼女くらいいたことあるでしょ」

「一人だけだよ。部活ばっかでそんな暇なかったし」



中学の頃は部活部活部活部活!!って感じで、ほかのことをしていた覚えがない。全国を目標にして、毎日毎日練習練習練習練習の繰り返し。

せっかくできた彼女にさえ、なにもしてあげられなかった。
部活だなんだといっていつも断ってしまう俺を、彼女はいつも「大丈夫。練習頑張って!全国いったら応援するから」なんて笑顔で言ってくれ、俺を送り出してくれた。


俺なんかにはもったいないくらいの彼女だった。



「泰長モテやがって!ちくしょう!」

「えー…俺は田中先輩みたいな男らしい人のほうがかっこいいと思いますけど」

「泰長は最高の後輩だ!!」


…田中先輩変わり身早すぎ。




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