そして鷹はペンギンになり翔ける

□通常運転
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てーん…とボールが床に落ちる。
しん、と静まる体育館。ギャラリーすら一言も言葉を発しない。



「ま、待て影山!気持ちは分かるが抑えるんだ!」


影山がキレるであろうと予測した大地先輩はあわてて宥めにはいるが、返ってきたのは怒鳴り声ではなかった。



「――…まだ…――何も言ってませんけど」


今までで一番感情のない声。


「(日向…お前の骨は拾ってやる…)」


また静まる体育館の静寂を切ったのは、田中先輩と月島だった。


「…ブゥォハー!!ぅオイ後頭部大丈夫か!!!!」

「ナイス後頭部!!」


体育館に響き渡る二人の笑い声。二人を止める菅原先輩と大地先輩。固まる日向。


「あっオイ影山っ」


大地先輩が止めに入るも、影山はゆらりと日向に向かって歩き出し、日向を壁際まで追い詰めた。


「まままま待て話せばわかるっっ!」

「………………………お前さ」

「ッ…………ハイ」

「一体何にビビってそんなに緊張してんの?相手がデカイこと…?初めての練習試合だから…?」

「…………」


影山の表情はこちらからは見えないが、ぶわああああっと冷や汗をかく日向の様子から、かなり影山の顔は恐ろしいことになってるのだろう。御愁傷様です。


「俺の後頭部にサーブをブチ込む以上に恐いことって―――……なに?」

「――…とくにおもいあたりません」

「じゃあもう緊張する理由は無いよなあ!もうやっちまったもんなあ!一番恐いこと!……それじゃあ…とっとと通常運転に戻れバカヤローッ!!」

「…アレ?今のヘマはセーフ?!」

「は?!なんのハナシだ」


言うだけ言ってスタコラ去っていく影山に、日向はポカンと口を開ける。
取り敢えずもう日向に、緊張で呑まれる心配は無くなったみたいだ。


今度は田中先輩に説教されてるみたいだけど。



「あの…泰長くんっ、」
「あ、ハイ」


突然呼ばれ振り返ると、なにやら心配そうな顔をした武田先生が。


「どうかしましたか?先生」

「…さっき菅原くんからルールを聞いたんだけど…リベロって本来、リベロだけフルで試合は出ないんだよね?」

「あぁハイ。普通は、スターティングの後衛の人の誰かと、ですね。後衛がリベロになります。――まぁ今回は公式の試合じゃないですし、向こうから俺を『フルで出せ』って条件なので、気にしなくて大丈夫ですよ」

「うん、それは分かってはいるんだけど……。泰長くん、アタックもブロックもできないのに、前衛にあがったら……」



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