そして鷹はペンギンになり翔ける
□“再会”と“大失敗”
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俺の初試合は随分前だけど、小学生くらいの時のクラブチームの時だった。
その時は初めてメンバーに入れてもらって、すっげぇガッチガチに緊張しまくって失点しまくりの苦い記憶しかない。
まぁ最初は誰だって緊張するものだ。
するものなんだけどさ、
「流石に、これは…」
マズイ。マズイよ。
「はぁ、泰長もそう思うか?」
隣にいた菅原先輩もひきつった笑いを浮かべる。
今日は青葉城西との練習試合当日。烏野にとっても緊張の一戦であり、みな一様に緊張しているが、その中で飛び抜けて緊張している奴が一名。
「日向、なんであんな緊張してるんですか?青城だからですか?」
「日向どうやら、戦うこと自体、まだ二回目…らしい」
「二回目?!?」
あまりにも少なすぎる数字に、思わず大声を出してしまった。
今回で二回目。ということは一回しか試合をしたことがない。……中学の三年間で、たったの一回。
「その一回も、中総体での北一との試合だからさ…余計緊張に慣れないっていうか…」
トイレに駆け込む日向を見ながら、菅原先輩は心配そうに影山を見た。
「影山、あまり日向を責めるなよ」
「ッス…」
「ああいうタイプはなかなか緊張に慣れないからなぁ…日向今日大丈夫ですかね?」
なんだか俺も心配になってきた。このままでは変人速攻が不発になる。
「「いや大丈夫だろ(でしょ)」」
平然とした顔で言い切る月島と影山。
「いや、お前らの場合落ち着きすぎだからな?」
「そう言うペンギンちゃんも落ち着いてない?」
「え、俺も緊張してるよ。リベロ初試合だもん」
「泰長さっきトイレで『できるできるやればできる諦めるな試合終了だ』って一人でブツブツいってたよね。俺ビックリしたよ」
「山口見てたのかよ!!」
「どこの松岡なの」
「どこの安西だ」
「やめて恥ずかしい!だって!『鏡の自分に向かって言い聞かせれば身体に影響する』ってテレビで言ってたんだよ!」
「で、ホントにそれやっちゃうわけ(笑)」
「あのなぁ、俺だって失点しないか不安なんだよ!(笑)とか言うな!」
お前と違って余裕なんてないの!と続ければ、ハイハイと雑に返され頭を撫でられた。
「ちょ、おいっ」
「失点しないか不安だから、気ぃ張って出来るんでしょ。ほら、やるよ」
「……オウ」
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