そして鷹はペンギンになり翔ける

□烏野高校排球部
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中総体から時も経ち、俺も無事に受験を終えて高校生になった。

足の故障もあってか、強豪校からの推薦は一つも来なかったので、自宅から通える烏野高校を受験し、見事合格。



「おっ泰長、今日これからカラオケいかね?」


SHRの終わりと共に男子がちらほらとこちらに集まってくる。あまり知り合いがいなくてどうしようかとは思っていたけど、そんな心配とは裏腹に無事に友達もでき、こうして放課後は誘ってくれる。



「あ、ごめん。俺今日行くとこあるんだ!」
「おー、そっか。じゃ、また明日なー」
「おー!じゃあな!」


生憎今日は予定があるので、急いでいる俺は早口で謝罪の言葉を述べて、教室を飛び出した。


目的は、体育館。


はっ、はっ、と息を乱して走る俺の脳裏には、昨日の病院での先生との会話が思い出される。




『先生、俺…逃げた。逃げてる。それでも、バレーがやりたいのって卑怯だと思いますか』
『泰長くんのことだから、どうせバレーを諦めきれずに部活決められなくて悩んでたんでしょ』
『うっ…その通りです』
『まぁ、残された道で足掻くのも人生なんじゃない?私は別にそれをカッコ悪いとは思わないわ』
『…明日入部届け出してみます』
『流石、エース』
『もう翔べないですけどね』



『翔べない鷹…飛べない鳥なんて、まるでペンギンね』
『はは、そうですね。俺は、ペンギンですね』





たとえ逃げてしまったとしても、俺は足掻いていたい。
翔べなくても、鳥なのだから。



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