翠玉の君、祈りし世界

□翠玉と義眼の少年
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(side.....レオナルド)


ーーああもう、最悪だ!
ザップさんと買い出しなんて、もう絶対に行くもんか。絶対にだ!!

なんて忌々しさを感じつつチラリとザップさんの方に視線を向ける。ニヤニヤと鼻の下を伸ばしてみっともない顔をしながら女の人と話をしている。詳しく言えば、ナンパして口説いている。

かれこれ何分経っただろう。ザップさんは粘って粘って女の人を帰すまいと話をしている。まるで僕なんてそこにいないみたいに。


「おーい、ちょっと…ザップさん、いい加減置いていきますよ?スティーブンさんに言われてるじゃないですか。『来客予定があるから買うもの買ったら早く帰るように』ってー」


一応声はかけてみるけれど、全く反応はナシ。もういい。スティーブンさんに言いつけてやる。ここからライブラは近いし、さっさと置いて帰ってしまおう。

と、足を踏み出した瞬間に後ろから来た人にぶつかってしまい、とっさに謝る。


「おわっ!すんません!」

「おっと、いーえ。お気にせず」


へらりとしながら、よろけもせずにその人はまた歩いていく。
背丈は僕より少し高いくらいで、白い肌に少し長め(ザップさんより少し長いくらい)の黒い髪のヒューマーだった。

特徴的なのは、露出した片耳にぶら下がっている大きな十字架のピアス。彼の見た目には不釣り合いなそれに、少し違和感を感じる。

ワイシャツにグレーのカーディガンをはおり、下はスーツのような格好をしている。観光に来た学生だろうか、僕よりも幾分か華奢なその容姿に少し心配になる。
ここに不慣れな観光客は狙われやすいし、細くて華奢な体格となれば尚更だ。

彼はここを歩いて、生きていけるんだろうか…。
すぐに殺されてしまいそうだ。


それよりも気になるのは、一瞬だけ見えた彼のオーラだ。彼の周りには、鮮やかな緑色のオーラがあった。
あんなの今まで見たこともない。彼も「血界の眷属」のように、見た目は人間だけれど、なにか特別な種族なんだろうか。



「……ん?」


歩こうとした足に、コツンと何かがあたる。それは、随分上質そうな革で作られたもので…


「財布…?これ、もしかして」


ふと脳裏にさっきぶつかった彼の姿がよぎる。

慌てて中身を見てみると、学生にしては多めの金額がそこに入っていた。きっと宿泊費などに違いない。これは届けないとマズイだろう。


彼が歩いて行った方向を確認すると、遠目に僅かだがその姿を確認することができた。まだ間に合う!


僕は勢いよく地面を蹴り上げ、彼の元へと向かった。





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