lonely(long)

□02>地獄
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「うぅっ、気持ち悪い...」
「白澤さん、しっかりして下さい」

私はフラフラと歩く白澤さんを支え
ながら花街を抜けようと歩いていた。
自然と深い溜め息が漏れる。

あの後、甘味処にいた女将さん夫婦に
妲己さんのお店の場所を聞いて、
それを頼りに花街の中へと入っていった。
そして酔いに酔った白澤さんを回収。

今、この状況に至る。


「昼間からこんなに呑んで...」
「はぁ〜、世界がグルグルするよ」

私はキョロキョロと辺りを見渡す。
...いかんせん、現在他が分からないのだ。
初めて地獄に来たわけだから、道なんて
全然分からないし所謂、迷子状態。

唯一頼りになるはずの白澤さんは、酔いで
このフラフラな有様だから期待出来ない。
辺りは完全に遊郭しか無い。

「ねぇ白澤さん、しっかりして」
「んー...むにゃむにゃ」

私は段々と危機感を感じていた。
ここが花街じゃなければよかったけど、
もう道行く人は男の人ばっかりだし
女の人はみんな高い下駄を履いてるし...

簪も刺していない私みたいな女が
到底、馴染める様な場所では無さそうだ。
もう雰囲気は完全に大河ドラマ。

「どうしよう...」

と、白澤さんが口を手で押さえる。
そして真っ青な顔でこちらを向いた。
冷や汗ダラダラで言いたいことは分かる。

「トイレ借りてくる...っ」
「は、はぁ...」

白澤さんは慌ててすぐ側にあったお店に
入って行き、私は溜め息をついた。
...まったく神様ってあんなんだっけ?

まぁでも、怪我が治るまでお世話になるし
そう長い期間でもない...せめて恩返しの
代わりに今くらいは支えよう。
白澤さんも吐けば少し酔いも醒めるし。

私は店先で白澤さんを待っていたが、
5分経てども10分経てども出て来ない。

「...大丈夫かなぁ」

心配になり、店の中へ入ろうとすると
不意に誰かに肩を叩かれた。
そして何か重いものがよしかかる。

「姉ちゃん今1人なの〜?」
「可愛いね〜」

耳元で聴こえた、粘り気のある言葉に
私は反射的に体をよじって逃げた。
するとケラケラと笑い声を浴びせられる。

笑っていたのは3人の鬼だった。

「ひ、人を待ってるだけですから...っ」
「え〜...一緒に遊ぼうよ〜」

生理的に受け付けない声をかけられて、
私は思わず後ずさりをする。
が、トンと背中が壁に当たった。

鬼達はニヤリと笑い、私は背筋がゾッと
冷えるのを感じて手を強く握る。

そして鬼の手がスッと私に伸びた。

駄目だっ、触られる...!!
やだやだやだやだ、絶対いやだ。
お願い白澤さん早く出て来て!

「白澤さん......助けてっ」
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