lonely(long)

□01>兎
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________私はある時から良い子になった。


どこにでもあるような幸せな小さな家庭。
優しいお母さんと頼りになるお父さん。
そんな2人の間に長女として生まれた。

そして、私には3つ年上の兄がいた。

優しくて頭が良くて、顔もかっこいい。
背が高くて皆が羨むようなお兄ちゃん。

小さい頃からいつも一緒に遊んでくれて
大きくなれば勉強も教えてくれた。
私はそんなお兄ちゃんがとても大好きで、
私達家族は、仲が良かった。


それは私が小学5年生の時のこと。


いつも通り学校から帰ってきて、家で
音楽を聴きながら宿題をしていた。

その日は、部活から帰ったお兄ちゃんと
一緒にゲームをする約束をしてて、
だから珍しく宿題に手を付けたんだ。

そんな時に掛かってきた1本の電話。
受話器を取ったお母さんが、一言二言
返事をすると膝から崩れ落ちた。


病院に着いた時には、もう遅かった。
お兄ちゃんの顔には白い布が掛かってた。

お母さんも、職場から来たお父さんも
2人ともお兄ちゃんにすがって泣いた。
でも、私にはよく分からなかった。

...お兄ちゃんは死んじゃったんだ。
部活帰り、轢き逃げにあって。
だけど...だけど、死ぬって何だろう?
お兄ちゃんはどこにいっちゃたんだろう?

それから...家族に亀裂が出来た。

お母さんがご飯を作ってくれなくなった。
お父さんがなかなか家に帰らなかった。
2人とも、お兄ちゃんが死んでから
まるで魂が抜けたような顔をしていた。

お兄ちゃんは勉強が出来た。
それにかっこよくて背も高い。
誰よりも優しい心を持っていた。


だから、私は良い子になった。


一生懸命に勉強して、部活もやって。
ご飯を作って家事も何でもこなして。

お兄ちゃんの代わりにならなくちゃ...
そしたら2人ともきっと喜ぶから。
私が良い子にならなくちゃ。





あーあ...また悲しませちゃうなぁ。
2人の子供をどっちも交通事故で亡くす
なんて、私は良い子じゃないな。

お母さんもお父さんも泣いちゃうかな。
ごめんね2人とも。

こんなところで死んじゃって...
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