ハイキューboys.

□欠色症/赤兎
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「赤葦ィー、購買!!!!」
「はいはい今行きますよ」


それから3日経って分かったことがある。
以前として、視界は白黒のままだけど
多分これは悪化もしないし治りもしない。

視力が落ちるとかそういうことは無く、
ただ単に視界から色が消えるだけらしい。

それと一色だけ例外があるのも分かった。


「木兎さん、そんなに食べるんですか」
「腹が減ってはナントカだからな!!」

ニッと笑う木兎さんの目。
その色だけが俺の例外だった。
金色にも似た目だけが、白黒に映える。
俺はハァと溜め息をついた。

「木兎さん...戦は出来ぬ、ですよ」
「おお、そうか!!」

何でこの金色だけは認識出来るのか。
この3日間ずっと考えていたが、もちろん
知識ゼロの俺に分かるわけもなく。

木兎さんが俺の目をじっと見つめる。

「赤葦の目って綺麗だよなー」
「は...な、何言ってるんですかアンタ」

ぷいっと顔を背けると、木兎さんが笑う。
ちなみにまだ、木兎さんにも言ってない。
というか誰にも言うつもりはない。
...何て言えばいいか分かんない。

「なぁ赤葦って膝、どうなんだよ?」

俺は、ふと右膝をさする。
病院から医療用サポーターを処方されて
それをつけているので少し硬い。

「元々、酷くもありませんでしたし...」
「じゃあ昼休みバレーやんね?!」

は、と突然の誘いに声が漏れた。
バレー...まぁ、ずっとやってないけど。
トスの上げ合いくらいならいいか....

「ご飯を食べ終わえたらいいですよ」
「ほんとか?!」

パァッと木兎さんの表情が明るくなる。
俺はバレー関係で久々に見るその表情に
思わずつられて頬が緩んだ。
木兎さんが急いで階段を登る。

「赤葦、早く!!」
「はいはい」

俺は木兎さんを追いかけながら思った。
...言ったら、どんな顔するかな。
てかすげー怒られるんだろうなぁ。

自分でもよく分かってない体のことを、
人に言えるわけ...ましてや木兎さん。
いらないって思われるかな。
まぁ、実際治らなかったら確実にバレー
の腕が落ちることは必至だな。


「使い物にならなくなったらどうします?」
「んぐ...あ、あかあひがか?」

大きな口でパンを頬張る木兎さんが、
微かに俺を見ながら首をひねる。
今日は珍しく外で食べているので暖かい。
ゴクリと木兎さんが飲み込んだ。

「いや、使い物にならないわけがねぇな」
「......はい?」

ぐいっとペットボトルに入った炭酸を
飲んで木兎さんが真顔で俺を見る。
俺は思わず弁当を食べる箸を止めた。

「だってお前、赤葦だもん」
「...いや、意味が分かんないんですけど」

俺が怪訝にそう聞くと、木兎さんは
小脇からバレーボールを取り出した。
久しぶりに見るそのフォルムに、俺は
懐かしささえ感じた。

「よし食ったな、ほら赤葦!!」
「あ、ちょ...」

空高く放られたボールに、俺は慌てて箸を
置いて立ち上がりフォームを取る。
指先にボールが当たった感触がした。
...前は毎日触ってたのに、懐かしいな。

「やっぱ赤葦、使い物にならなくねぇよ」

木兎さんがトスを返しながら笑う。
俺は全く意味が分からなかった。

「木兎さん、それどういう意味ですか?」
「そのまんまだっつーの」

タンタンと軽い音を立てながら、ボールは
太陽を掠めて俺達の間を行ったり来たり。
白黒の視界の中、木兎さんの金色の目が
しっかりと俺のことを捉えていた。
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